2017 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanisms underlying inhibition of habits
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17H04749
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
青木 祥 沖縄科学技術大学院大学, 神経生物学研究ユニット, 研究員 (80720672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 線条体 / 習慣的動作 / 動物モデル / 神経活動操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
動作の癖を直す。これはスポーツ指導の現場において競技者・指導者が直面する難題である。実際、習慣化・固定化した動きの癖すなわち習慣動作の改善は容易ではない。本研究は、そのような動作の癖を抑制する脳機構を解明する基礎研究である。先行研究において、行動の切り替えに重要な機構として、線条体コリン作動性介在ニューロンの存在が明らかになっている(Aoki et al., Journal of Neuroscience, 2015ほか)。本研究では、これらのニューロンが習慣動作の抑制に重要な役割を果たすと仮説を立て、動物モデルを用いた研究を進める。 本年度は、種々の神経活動操作法を組み合わせることで、線条体コリン作動性介在ニューロンに選択的な機能阻害および神経活動亢進を人為的に引き起こし、習慣動作の抑制に果たす役割を検証した。同ニューロンの選択的除去は、免疫組織学的手法により確認された。化学遺伝学的神経活動操作の機能性については、in vitroの脳切片から神経活動を測定することで確認された。 その結果、線条体コリン作動性介在ニューロンの選択的除去は習慣動作の抑制能力に影響を及ぼさなかった。一方で、線条体コリン作動性介在ニューロンの神経活動亢進を化学遺伝的手法により引き起こすと、習慣動作を抑制し新たな動作を獲得・置換する能力が高まった。この結果は、線条体コリン作動性介在ニューロンの神経活動は習慣動作の抑制そのものには関与せず、癖となった動作を新しい動作へ置換する際に因果的な役割を果たすことを示唆している。 この発見は、線条体コリン作動性介在ニューロンと習慣動作の抑制・置換を結びつける重要な知見である。今後は、詳細なメカニズムについて、線条体および線条体コリン作動性介在ニューロンに対するどのようなシナプス入力が習慣動作の抑制・置換に重要になるのか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに実験が進んでいるため。線条体コリン作動性介在ニューロンの化学遺伝学的手法による神経活動操作法をラットにおいて確立できた。さらには、実際に同ニューロンの神経活動を人為的に亢進させると動作の癖の抑制には影響はないものの、動作の癖を別の動作に置換する能力を高めるという発見ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では遺伝学的手法の適用が易しくかつ多様な神経操作が可能なマウスによる実験系に切り替える。種々の遺伝子改変マウスおよび細胞種・経路特異的な神経活動操作を行うことで、動きの癖を抑制する神経回路の同定とメカニズムの理解を深める。具体的には、線条体に対するどの脳領域からのシナプス入力が動作の癖の抑制・置換に重要であるのか、主に大脳皮質と視床に着目して研究を進める。どちらの領域も数多くの亜領域を有するため、はじめに行う機能阻害実験については探索的に行う。一方で、線条体へシナプス入力を持ちかつ習慣動作の抑制・置換に重要となる脳領域が同定された場合は、同領域の細胞種に選択的な役割の検証を行う予定である。
同時並行的に、解剖学的実験・解析も進める。動作の癖の抑制・置換に重要となる線条体が実際の運動出力に影響を及ぼすためには、最終的には大脳皮質運動野あるいは別の脊髄へ運動出力を有する経路へ連絡する多シナプス神経回路を必要とするはずである。これらの多シナプス神経回路の詳細はほぼ明らかになっていない。このことから、線条体および大脳基底核からの他の脳領域への出力について解剖学的な実験を行い、その機能を推察していく。
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