2019 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素トレーニングによる特異的適応を効率的に獲得するトレーニングプログラムの検証
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17H04755
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高倉 久志 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20631914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低酸素環境 / 持久的トレーニング / ミトコンドリア / HIF-1α / 筋有酸素性代謝能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、運動トレーニングによる酸素利用能力への効果を維持したまま、低酸素環境特異的な適応を得られるようなトレーニングプログラムを開発することを目的としている。昨年度までに、低酸素環境を利用した一過性運動が有酸素性代謝能力に及ぼす影響について検討し、常酸素環境下における一過性持久的運動後に短時間低酸素暴露を行うプロトコルが酸素供給系および利用系に影響を及ぼすことが示唆された。本年度はそれらのデータを踏まえて、低酸素環境を用いた持久的トレーニングが筋の有酸素性代謝能力、とりわけミトコンドリアタンパク質の発現量に及ぼす影響について検討を行った。 被験動物には9週齢のWistar系雄性ラットを用いた。通常の実験環境に1週間馴化させた後、無作為にコントロール群(Con群)、低酸素環境下で持久的トレーニング運動を実施する群(TUH群)、持久的レーニング後に低酸素曝露する群(HAT群)、常酸素環境下でのレーニング群(TUN群)に分類した。トレーニングは9週間のトレッドミルランニングとし、斜度5°に固定し、運動時間は最大90分、走行速度は最大で30 m/minで実施した。TUH群の設定走行速度は、HAT群とTUN群における走行速度の9割とした。 ヒラメ筋においてミトコンドリアタンパク質であるCOXIV発現量を検証したところ、HAT群のCOXIV発現量はTUN群のそれと比較して低値を示した。低酸素暴露環境下においてはミトコンドリアタンパク質発現量が減少することが報告されているので、持久的トレーニングに低酸素の要素が加わったことによって、トレーニングによるミトコンドリア量の増加が抑制されてしまったのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、低酸素環境を用いた持久的トレーニングが筋の有酸素性代謝能力、とりわけミトコンドリアのタンパク質発現の変化について検討を行った。トレーニングプロトコルを決定するための予備実験や、低酸素環境を用いた一過性運動が筋有酸素性代謝能力に及ぼす影響に関する実験データをまとめるのに時間を要してしまったため、本来は筋有酸素性代謝能力に及ぼすトレーニング効果を細胞外からの酸素供給能力、筋細胞内酸素運搬能力、筋細胞内酸素利用能力の3観点から検討する予定であったが、筋細胞内酸素利用能力に対する効果を検討するに留まった。今年度においては、低酸素環境を利用した持久的トレーニングの適応を上記の3観点から検証することを主な目的としていたため、達成度はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き低酸素環境を用いた持久的トレーニングが筋の有酸素性代謝能力に及ぼす影響を細胞外からの酸素供給能力、筋細胞内酸素運搬能力、筋細胞内酸素利用能力の3観点から検討する予定である。とりわけ、細胞外から、および細胞内での酸素供給能力に対する影響は検討できていないため、それらに関与するタンパク質やmRNAの発現レベルの違いがあるか否かについての解析をウェスタンブロティング法やリアルタイムPCR法、蛍光免疫染色法などの実験手法を用いて優先的に進める。また、低酸素環境を用いた一過性運動による応答についても、低酸素環境から常酸素環境へと移り変わることが遺伝子発現の変化に影響を及ぼしている可能性を想定し、新たな運動条件を追加し、網羅的な解析方法も用いることを視野に入れながら、低酸素環境と運動トレーニングの組み合わせが筋の有酸素性代謝能力に及ぼす影響について更なる検証を行う。
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