2017 Fiscal Year Annual Research Report
Social dynamics and interregional exchange in the Formative Andes
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17H04778
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山本 睦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (50648657)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文明形成 / 神殿 / 地域間交流 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンデス形成期(紀元前 3000 年-紀元前後)では、神殿をめぐる活動と地域間交流が社会変化に際して重要な役割をはたすとされる。しかし、その実証的研究は不十分である。そのため、本研究は、2005年から実施してきたペルー最北部ワンカバンバ川流域での調査を継続的に発展させることで、神殿社会の通時的変化と地域間交流との具体的な関係を解明することを目的としている。 そこで平成29年度には、ワンカバンバ川流域の調査データと比較検討するため、アンデスで荷駄獣として利用されるラクダ科動物の自然生息域であり、形成期以前からの利用が考えられるナスカ市近郊で調査を実施した。その結果、ペルー文化省に未登録の遺跡を複数登録しただけでなく、ラクダ科動物を伴うルートの選定と利用方法、その季節的変化、あるいは現代における徒歩移動ルートとの類似性や差異などについて、比較研究に役立つ詳細なデータを入手した。これは、環境的・文化的に特色の異なる地域との比較研究を通じて、より多角的な視点から神殿社会の成立・展開と地域間交流との動態的相互関係を実証的に明らかにするための、基礎データとなるものである。こうしたナスカ市近郊のデータは、日本でGISの専門家と連携しながら整理を進めている。 また、平成28年度以前に実施したワンカバンバ川流域のインガタンボ遺跡とイェルマ遺跡の人骨および動植物遺存体の分析を実施中であり、動植物遺存体の同定は平成30年6月に終了予定である。人骨と動植物遺存体は、平成30年度以降にコラーゲンを分析するためのサンプリングをすませている。 さらに、これまでの科研費による研究成果をもとに、2017年11月にペルー共和国でペルー人研究者とともに国際シンポジウムを企画、実施した。 なお、平成29年度の成果については、平成30年度にペルーの学会での発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度には、当初の計画通り、ナスカ市近郊で調査を実施し、重要な知見をえることができた。 また、平成28年度以前にワンカバンバ川流域で発掘した二遺跡の出土資料を分析しながら、GISを用いて遺跡分布やルートに関するデータを整理・分析している。。 これらのことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に獲得したデータの整理・分析作業をすすめる一方で、ワンカバンバ川流域のインガタンボ遺跡とカニャリアコ遺跡で発掘調査を実施する予定である。調査と関係する自治体や考古学者、出土遺物の専門家との調整はすでにすませている。出土遺物の分析に関しては、専門家の協力を仰ぎながら平成30年度中にはじめ、日本での分析が必要な資料の国外持ち出し手続きは9月までにをおこなう予定である。 今後は、国内外の学会やシンポジウムで研究成果を随時発表しながら、様々な研究者との意見交換を通じて、本研究の精緻化に努めていく。
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