2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of single molecule STM photoluminescence spectroscopy for investigation and manipulation of energy dynamics in nanoscale
Project/Area Number |
17H04796
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今田 裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80586917)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / フォトルミネッセンス分光 / 単一分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
連続発振の波長可変レーザーを用いた単一分子からのフォトルミネッセンス(PL)分光において、<0.01 meVのエネルギー分解能と<1 nmの空間分解能を世界に先駆けて達成した。この手法を用いることで精密に励起状態のエネルギー幅を測る事に成功し、金属基板上の4原子層のNaCl薄膜上に吸着した単一フタロシアニン分子の励起状態のエネルギー幅が0.2 meVよりも広いことを明らかにした。これは、励起状態の寿命に換算すると数psよりも短いことに相当し、従来報告されている値よりも2-3桁ほど励起状態寿命が短いということを示唆している。さらには、静電場やプラズモン電場との相互作用の詳細を明らかにし、励起状態のピークエネルギー値やそのピーク幅を制御可能であることを実証した(H. Imada et al., in preparation)。 単一分子PLの実験セットアップをそのままに、光らない分子を試料に用いることで、単一分子共鳴ラマン散乱の測定を行った。分子に固有のHOMO-LUMO遷移を共鳴ラマンに用いることで、非常に大きな共鳴効果が得られ、従来報告されている単一分子ラマンスペクトルに比べて強いシグナルを得ることが可能になった。単一分子ラマンシグナルの空間依存性から、局在プラズモン増強を用いた共鳴ラマン散乱における選択則を解明することに成功した(R. B. Jaculbia, et al., Nature Nanotechnology 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目標であるSTMを用いた単一分子フォトルミネッセンス(PL)分光の原理実証は前年度までに成功していた。研究開始時当初の研究計画には含まれていなかったが、単一分子STM-PLに狭線幅の波長可変レーザーを用いることで、非常に高いエネルギー分解能と原子スケールの空間分解能での精密計測を世界に先駆けて実現した。この手法は原理的にはレーザーの線幅で決まる10^-9 eVのエネルギー分解能を有しており、従来の手法に比べ桁違いに高い精度での計測が可能となる。 高い精度の分光計測により、単一分子が感じる静電場やプラズモン場の影響が明らかになり、単一分子励起状態を外場によって制御できる可能性までも見出すことに成功した(H. Imada et al., in preparation)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度となるため、研究成果を論文として発表することと、確立したSTM-PL法を他の試料へ適用することを目標として研究を推進する。 新たな研究対象として、単一分子内でのスピン状態変化(項間交差)の解明に着手している。STM-PL法の特色として、光励起のスピン選択則から励起スピン一重項状態を選択的に形成する。一方で従来法であるトンネル電流を励起源としたSTM-ELでは、そのような励起におけるスピン選択性は乏しい。本研究で開発されたSTM-PLと従来のSTM-ELを同一の分子に用いることで、異なるスピン状態から始まるダイナミクスが直接比較可能である。特に、スピン軌道相互作用が強い重原子を含む色素分子でのスピン変換ダイナミクスの解明を目指している。
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Research Products
(17 results)