2018 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用を利用した3d遷移金属酸化物の磁性制御
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17H04813
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40378881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 磁気異方性 / 酸化物ヘテロ構造 / ストレイン / 格子歪み |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、遷移金属酸化物をヘテロ構造化することでバルクにはない特異な結晶構造を安定化し、スピン軌道相互作用などの磁気特性に関連した相互作用を変調することで、機能特性を制御・開発することを目標としている。遍歴強磁性体であるルテニウム酸化物において、ルテニウム酸化物の膜厚が数nm程度になった場合において、正常ホール効果や異常ホール効果では説明できないホール抵抗率の興味深い振舞いを見出した。マイナーループ測定を含めた詳細な磁気輸送特性評価から、この特異な振舞いは基板からのストレインの種類や大きさには依存しないことが分かった。また薄膜中のカチオン不定性にも強く依存することも明らかになった。このようなホール効果の異常な振舞いは、これまで議論されてきたようなトポロジカルホール効果を起源とするものではなく、薄膜中に正および負の異常ホール効果が共存することが起源であることを提案した。またこの異常ホール効果の特異な振舞いは電界印加によっても変調でき、また時間経過とともに変化することも見出した。これらの特異な振舞いも、薄膜中の正および負の異常ホール効果の共存を考慮するモデルでコンシステントに説明できることも分った。またCo酸化物においても、エピタキシャルストレインを印加することで、磁気異方性を変調でき、垂直磁気異方性を付与できることも見出した。放射光X線回折からエピタキシャルストレインによって誘起される格子歪みを同定し、磁気異方性との相関をも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイナーループや電界効果など詳細な磁気輸送特性評価から、ルテニウム酸化物の異常ホール効果に見られる特異な振舞いに関してその起源を同定した。これまで議論されきたトポロジカルホール効果を考慮しなくとも、薄膜中に正および負の異常ホール効果が共存することを仮定するだけで、異常ホール効果の特異な振舞いを説明できることを提案した。このモデルで、電界効果を含めた異常ホール効果の様々な特異な振舞いを説明できる。またCo酸化物においても磁気異方性と格子歪みとも相関を同定できた。遷移金属酸化物の磁気異方性制御に関する指針を得ることができた。今後の磁気特性制御に関して重要な指針となると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、得られた指針を基に、3d遷移金属酸化物の磁気特性制御を推進する。また本課題における材料探索の過程で、室温で垂直磁気異方性を有する3d遷移金属酸化物の作製にも成功している。現在、薄膜作製条件の最適化や薄膜の磁気輸送特性評価にも取り組んでおり、垂直磁気異方性の起源も解明できるものと期待される。電界効果トランジスタデバイスの作製にも取り組みながら、3d遷移金属酸化物の磁気特性制御を行う。
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Research Products
(15 results)