2019 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04849
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高津 浩 京都大学, 工学研究科, 特定講師 (60585602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピンアイス / 磁気モノポール / Tb2Ti2O7 / Dy2Ti2O7 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はTb2+xTi2-xO7+yにおける量子スピンアイスと四極子秩序の関係について低温比熱測定やモンテカルロ計算から調べた。またフラックス法を用いた低温での単結晶合成を新しく試みて、10 mm角の大型単結晶の合成に成功した。具体的には以下の研究実績を得た。その他、類縁化合物の合成について論文にまとめた。
①Tb2+xTi2-xO7+yのx値の異なる試料の低温比熱測定に加え、古典スピンモンテカルロ計算の計算を行った。その結果から四極子モーメント間の超交換相互作用のパラメーターを小さくすることで、比熱のピークが消失していく振る舞いを再現できることがわかった。すなわち、xc ~ 0.0025は量子スピンアイスと呼べるスピン液体とモノポールの凝集とみなせる四極子秩序の量子臨界点に位置するものであることが明らかになった。
② Tb2+xTi2-xO7+yの浮遊帯域溶融法による結晶合成の問題点は、高温にして溶かしている時にxが増加すること、つまりTiが蒸発することが原因であると考えられる。これを解決するためにフラックス法による低温合成を使って単結晶の合成を試みた。その結果、フラックスにKFを用いることでTb2+xTi2-xO7+y の単結晶を育成することに成功した。結晶の形状は八面体型で、一辺の長さは10 mmにもなる大型の結晶を得た。格子定数から育成した結晶の組成比を見積もると、原料の多結晶と育成した結晶とのxのずれが0.003程度と非常に小さいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tb2+xTi2-xO7+yにおいてモノポールの凝集相である四極子秩序や量子スピンアイスの実態について浮き彫りにできた。また、これまでと異なる方法で単結晶合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
① Tb2+xTi2-xO7+yではこれまでに酸素量の調整が及ぼす物性への影響は十分に吟味されていない。そこでx = -0.005の試料を様々な条件でアニール処理を施す。yの最適条件を見極めると共に0.1 Kまでの交流磁化測定と比熱測定から量子モノポールや仮想的フォトンの準粒子励起の実態を細かく調べる。
②Ho2Ti2O7の単結晶を用いて交流磁化率の周波数依存性を調べる。典型的なスピンアイス磁性体のDy2Ti2O7や量子スピンアイスのTb2Ti2O7の結果と合わせてスピンアイスのモノポール励起のダイナミクスを吟味する。
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