2017 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子から隕石有機物へ:重水素存在度を指標とした分子進化プロセス解明
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17H04862
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00507535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 化学進化 / 星間分子雲 / 太陽系 / ヘキサメチレンテトラミン / 同位体分別 / 光化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
極低温表面反応装置を用いて,重水素置換ヘキサメチレンテトラミン生成実験をおこなった。水・メタノール・一酸化炭素・アンモニア(5:2:2:2)混合ガスを反応基板上に蒸着し,それと同時に真空紫外光を照射した。メタノールの組成は,低質量原始星IRAS16293-1422で観測された比を再現し,CH3OH:CH2DOH:CHD2OH:CD3OH:CH3OD = 100: 30: 6: 1: 2とした。照射終了後,基板温度を室温にし,生成したヘキサメチレンテトラミンを含む混合有機物を水-メタノール混合溶媒で回収した。回収されたサンプルをLC-orbitrap質量分析計で分析した。 生成したヘキサメチレンテトラミンには,最大で一分子あたり8個の重水素が含まれていた。さらに,反応材料に比べて,生成したヘキサメチレンテトラミンはおよそ3倍重水素が濃集されていることが明らかになった。これはヘキサメチレンテトラミンが光化学反応による分子進化過程の中で,重要な重水素キャリアとなることを強く示唆する。本結果は宇宙物理学でもっとも有名なジャーナルのひとつであるThe Astrophysical Journalで発表された。 また,新たに購入した液体クロマトグラフを用いたヘキサメチレンテトラミンを効率的に回収する手法の検討を開始した。具体的には,液体クロマトグラム上で検出されるヘキサメチレンテトラミンのピークを分取し,さらに固相マイクロ抽出による精製を検討している。これにより,上記実験で作製したヘキサメチレンテトラミンを,今後の熱(水)分解実験に用いることが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究予定通りに概ね進行でき,さらにすでに学術論文として成果を発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の研究計画にのっとって実験を進める。
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Research Products
(12 results)