2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the complete reaction pathways of the water decomposition reactions in the oxygen-evolving complex of photosystem II
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17H04866
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00593550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 反応機構 / 水分解反応 / 水分子挿入 / 酸素酸素結合 / 酸素分子放出 / QM/MM / 光化学系II / 協奏機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系II(PSII)は光合成の最初の光エネルギー変換反応(水分解反応)を担っており、その優れた反応は生化学的重要性のみならず、理想的な人工光合成の分子設計にとっても極めて有益であり、現在非常に注目されている。PSII の反応サイクル(Kokサイクル)では、光吸収後に電荷分離反応が起こり、反応中心(OEC)は1電子酸化されて安定中間状態(S状態)が遷移する。本酸化反応が4回起こることで、水分子は酸素分子に酸化される。本反応機能の優れている点は副生成物を生成させず、可視光の低いエネルギーを多段階組み合わせる事が可能になっている点であるが、本反応機構は未だ多くが未解明である。そのため、大規模量子古典混合計算法により、正確に反応過程を追跡することでその仕組みを解明する。そのために、様々な反応経路を統一的に評価する事、様々な酸化状態、スピン状態、プロトン化状態、コンフォメーション変化について理論的解明を進展させる。 これらの研究には量子古典混合計算(QM/MM)の高速実施に特化した専用計算機を占有利用することが必要である。そこで、まず初めに必要な計算機環境を構築した。研究に利用するQMモデルを用いて、ベンチマーク計算を実施し、最適な計算機構成についてテストし、本課題に最も適した並列計算機を策定した。計算機ノードは12ノードで構成されている。 本計算機を用いて、光化学系II(PSII)の水分解の反応サイクルで最も解明が遅れていたS3->[S4]->S0過程を検討した。考えうるすべての反応経路を探索した。それにより、プロトン移動、O―O結合形成機構、水分子挿入、酸素分子放出過程について理論解明することに成功し、結果を論文として順次まとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、研究が進んでいる。最適な計算機を導入し、特筆すべき多くの研究結果を得るに至ったが、投稿先でレフリーに多くの難題を要求されてしまい、その対応で多くの時間が掛かってしまい、H29年度中には成果を論文として出版できなかった。 本研究ではPSIIの重要な反応経路を大規模QM/MM計算により実施した。反応は大きく分けて水分子挿入過程、酸素結合形成、プロトン移動と酸素分子放出過程に分解される。水分子の挿入過程はS2->S3遷移とS3->S0遷移過程で行われると考えられる。S2->S3遷移における水分子の挿入過程については2015年に我々が検討を行っていたので、その研究を発展させて、S3→S0遷移での検討を行った。その結果、Caに結合するW3水分子が挿入する経路が、検討した中で、最もエネルギー的に起こりやすい事を見出した。本反応経路ではS3->S0で結合する水分子の酸素原子は新しいO5となり、次サイクルにける基質の酸素原子の1つになる事が導かれた。本結果に関して必要なデータを揃え、論文としてまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、O―O結合機構の解析および、プロトン移動とMnクラスター周囲の保存アミノ酸残基との相互作用について、反応機構との関連性から、役割を明確にし、効率的な水分解機構がどの様にして行われているかの分子メカニズムおよび電子状態変化を明らかにする。
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