2019 Fiscal Year Annual Research Report
Building Database of Tsunami Damage Prediction and Tsunami Protection Measures of Mooring Vessels at a Wharf
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17H04975
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
増田 光弘 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00586191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 津波防災 / 津波被害予測データベース / 津波防災対策データベース / 岸壁係留船舶 / 数値シミュレーション / MPS法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は本研究によって整備された数値シミュレーション法を用いて、被害状況シミュレーションを実施し、船舶の大きさごとに被害状況を整理し、津波被害予測データベースを構築することを計画していた。そこで本年度は日本全国の主要港湾を対象に津波被害予測データベースを作成することを試みた。本研究では東日本大震災により被害を受けた東日本側の港湾と南海トラフ地震により被害が予想されている関東から西日本にかけての港湾から対象を選定した。対象とした港湾は、東日本側から6港湾、関東から西日本にかけて17港湾である。対象津波は、東日本側では東日本大震災発災時に実際に観測された津波高のデータを参照した。関東から西日本にかけては南海トラフ地震により発生が予測されている津波高のデータを参照した。また、想定を上回る津波が来襲する可能性も考慮し、津波高を+1mとした値による検討も行った。対象船舶は、商船を対象とすることとし、AIS情報から各港湾内の特定の期間における船舶の入出港データを取得した。港湾内における船舶の状態は岸壁係留状態を想定し、研究代表者がこれまでの研究で作成してきた係留索の破断と乗り揚げの有無の評価チャートおよび乗り揚げ算定式、数値シミュレーションによって係留索の破断の有無と岸壁への乗り揚げの有無を潮の満ち引きによる差を考慮し、評価を行った。これらの評価結果をまとめ津波被害予測データベースを作成した。本津波被害予測データベースは、日本全国の主要港湾における津波被害を統一的に評価できるとともに、各港湾で予め適切な対策を検討することが可能であり、我が国における船舶の津波防災・減災対策の発展に大きく寄与できるものだと考えられる。また、本津波被害予測データベースはデータを蓄積するための受け皿としての役割も果たし、今後さらなる調査・検討項目を追加していくことによってより充実したデータベースとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の到達目標は津波被害予測データベースの作成であったので本研究はおおむね当初の想定通りに進んでいると判断できる。ただし、令和元年度では中型~大型の商船を対象としており、小型の漁船は排除した。これは各港湾におけるAISデータを取得する際に小型の漁船は正確なデータを公開していない場合が多く、検討対象として課題が多かったためである。そのため、小型船舶の津波被害状況調査は翌年度へ持ち越しとなった。また、対象を岸壁係留船舶に絞って検討を行ったが、港湾内における錨泊船舶の被害についても検討を行う必要がある。令和元年度ではそのための錨泊船舶の漂流状態検討のための模型を購入し、翌年度円滑に錨泊船舶に関する検討を行うことができるよう準備を進めている。令和元年度の研究成果において重要な点は受け皿としての津波被害予測データベースが作成されたことと、パラメータ抽出方法・被害状況の評価・検討方法を示したことであり、本データベースの枠組みが出来上がったことによって今後はここにデータを蓄積していけばよい。翌年度の研究目標は津波防災対策データベースの作成である。津波防災データベースは津波被害予測データベースに基づいて研究代表者らがこれまで検討を行ってきた防災・減災対策の有効性を示すとともに、課題点を整理していくことになる。そのため、津波防災対策データベースの作成と並行して、持ち越しとなっていた被害予測データベースの拡充を図ることは十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の目標は津波防災対策データベースを作成することである。ただし、令和元年度に実施予定であった津波被害予測データベースの評価項目に該当する小型船舶および錨泊船舶の津波被害予測・評価を行う必要がある。津波防災データベースは津波被害予測データベースに基づいて研究代表者らがこれまで検討を行ってきた防災・減災対策の有効性や課題点を整理していく作業となるため、それと並行して津波被害予測データベース拡充のための検討を進めていく。そして、被害予測が完了した項目については順次防災・減災対策について検討を進めていく。ただし、新型コロナウィルスの影響によって前学期の研究活動を自粛せざるをえず進捗状況が停滞している。本研究は学生を含めて研究チームとして検討を進めていく必要があるが、現状それが実行できない状況にあり、目標達成に向けてスケジュールを調整する必要がある。現状では、まず現状で津波被害予測データベースに示されている船舶の被害状況に対する防災・減災対策を適用し、その効果を評価していく予定である。それらの結果を用いて津波防災対策データベースの形を示す。そして、本格的に大規模な数値シミュレーションや水槽実験を含む研究活動を行うことができる状況になり次第、各データベースの拡充のための検討を行っていく予定である。さらに、研究活動が停滞している期間を有効に活用するために、本機関の間に本研究成果を広報するための手法について予め検討しておく。
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