2018 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the mechanism of human mesoderm development using heterogeneity of induced mesodermal cells
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17H05006
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高里 実 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40788676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中胚葉発生 / 腎臓オルガノイド / ヒトiPS細胞 / 分化誘導 / 1細胞解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでの研究で、ヒト胎児の体幹の前部と後部に位置する中胚葉をヒトiPS細胞から同時に誘導し、そこから腎臓オルガノイドを作成している。この分化系はヘテロジニアスな中胚葉細胞を内包するがゆえに、ヒト中胚葉の分化メカニズムを研究するプラットフォームとして最適である。本研究計画では、このユニークな中胚葉分化誘導系を1細胞レベルで解析し、ヒト中胚葉発生における細胞運命決定メカニズムの解明を目指す。そこでまずは、各中胚葉領域への細胞の分化傾向を解析するため、前方、後方、内側、外側の全ての中胚葉細胞が含まれるようにヒトiPS細胞を分化誘導する必要がある。研究代表者の開発した中胚葉誘導系が4つの領域をバランス良く含むように、分化誘導プロトコルを最適化した。ヒトiPS細胞が分化開始9日目に中胚葉に分化した段階でqRT-PCR及び免疫染色を行い、それぞれの領域のマーカー遺伝子(前方:GATA3、後方:HOXD11、内側:PAX3、外側:FOXF1)の発現を確認した。結果、分化9日目の中胚葉細胞郡で、全ての領域の中胚葉細胞が発生していることを確認した。 次に、この細胞群を1細胞トランスクリプトーム解析に用いるため、細胞乖離の条件検討を行い、全ての細胞が1細胞にまで乖離しつつ、死細胞の割合が最小となる乖離条件を確立した。ヒトiPS細胞が分化開始9日目の細胞群を対象に1細胞トランスクリプトーム解析を行うために、10X社Chromiumマシンにより、各1細胞から合成した約3000細胞のcDNAからRNA-seq用のライブラリを作成し、これを次世代シークエンサーにかけた。結果、計4700細胞のトランスクリプトームデータを得ることができ、t-SNE解析の結果、細胞の種類を大まかに6つのクラスターに分類できることがわかった。今後、より詳細な解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年11月、1細胞乖離条件の検討において、Fluidigm C1の流路チップの設計に問題が発覚し、これに対処する新しい流路チップがリリースされたが 、新しい流路チップの利用実績が十分でなく計画通りに1細胞処理が行われるか定かではなかった為、所属機関で使用実績を持つ機器であるChromiumを使用することとなった。機器の変更に伴い細胞乖離をより厳密に行うため、条件検討の期間を延長する必要が生じた。しかし、その後の研究の進捗により、この問題をクリアにし、1細胞から作製したcDNAからRNA-seq用のライブラリを作成し、これを次世代シークエンサーにかけるところまでを達成できている。最終年度は、このデータを解析し、細胞運命を決定する因子を同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞が分化開始9日目の細胞群を対象に1細胞トランスクリプトーム解析を行い、複数種類の中胚葉細胞が含まれているかを確認する。複数種類の中胚葉細胞が含まれている場合には、この分化条件を用いて、9日間の分化期間中、3日目から48時間ごとに9日目まで(計4回)細胞を回収し、時系列的に1細胞トランスクリプトーム解析を行う。 上記で得られた次世代シークエンサーのデータセットを解析して、それぞれの中胚葉領域が発生する分子メカニズムを明らかにする。まずは、t-SNE法(高次元のものを2 または3 次元に写像する解析手法)を用い、各中胚葉領域への発生経路を可視化する。この解析によって、分化過程のどのタイミングで個々の細胞の運命が分かれるのかを調べることができる。次に、この細胞運命が決定されるタイミングで、どのようなシグナル経路や遺伝子発現が増減するかを調べ(pathway analysis)、細胞運命を決定する因子を同定する。 最後に、上で得られた知見に基づき、同定されたシグナル経路を、同定された組み合わせを使い、同定されたタイミングで分化誘導系に導入することで、実際に任意の中胚葉領域をヒトiPS細胞から選択的に誘導できるかどうかを確認する。
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Research Products
(15 results)