2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H05048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 和也 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 講師 (00648280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有性生殖 / 性決定 / 単為生殖 / シロアリ / ゲノム / 胚発生 / 次世代シーケンサー / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、性の維持メカニズム解明を目指し、ゲノム・トランスクリプトーム解析によって、シロアリの性決定と単為生殖能力を支配する遺伝子を特定を目的としている。既に、コウシュンシロアリにおいて、性とリンクした遺伝マーカーを発見し、胚発生初期 に雌雄を判別する手法を確立している。 今年度は、雌雄ペアとメス2匹のペアで巣を創設させ、受精卵と未受精卵の孵化率をそれぞれ確認したところ、未受精卵の孵化率に極端な種内変異が存在することを再確認した。得られた結果から、メス2匹のペアのうち、特に孵化率の高いペアと全く孵化しなかったペアを取り出し、それぞれが産んだ発生初期の未受精卵を用いて、発現している遺伝子(RNA)を抽出し、次世代シーケンサー用のライブラリーを作成し、Hiseqによって配列決定を行った。得られたデータを国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターシステムを用いて解析を始めた。 同時並行で脱皮直後のコウシュンシロアリ1個体を用いて長鎖のDNAを抽出し、Chromium Systemを用いたライブラリ作製および次世代シーケンサーを用いた塩基配列決定を行った。こちらも得られたデータを国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターシステムを用いて解析を始めた。 加えて、石垣島・西表島に生息するコウシュンシロアリについて性比を沖縄本島と比較した。 また、理論研究として有性生殖が生物種の性質、個体群動態、ひいては群集動態に与える影響をモデル化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費応募時から所属が変更となったため一部の機器が使えない環境に移ったが、それらは受託解析によって行った。これに伴い当初予定していた連鎖解析が実行できなかったが、ドラフトゲノムおよびトランスクリプトーム解析は順調に進んでおり、今後の解析が順調に進めば連鎖解析が無くても十分候補遺伝子の絞り込みが可能である。これらのことからおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーから得られたデータから遺伝子のスクリーニングを行い、性決定および単為発生に関与している可能性の高い遺伝子を絞り込む。結果が得られ次第論文化していく予定である。また、必要に応じて前年度に出来なかった連鎖分析を行う。 加えて、性決定および単為発生に関与している可能性の高い遺伝子の進化的背景を調べる為、石垣島と沖縄本島における単為生殖能力と性決定に関して比較調査を行う。性決定および単為生殖の進化に関わる理論的背景を調べ、遺伝子の進化史を考察する。
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