2019 Fiscal Year Annual Research Report
がんにおける薬剤耐性の阻害を目指したZIC5標的薬の同定と検証
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17H05056
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (90469966)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / メラノーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞が治療薬に抵抗性を持つ現象である「薬剤耐性」はがん根治を妨げる大きな問題であり、薬剤耐性を克服する治療法の開発が必要である。申請者はこれまでに、メラノーマの薬剤耐性を亢進させている因子としてZIC5を同定している。がん特異的に高発現しているZIC5はメラノーマ・大腸癌・前立腺癌の薬剤耐性を亢進させる。ZIC5を阻害すると、分子標的薬や抗がん剤によるがん細胞死の誘導率が大幅に増加する。また、ZIC5の阻害により、既に薬剤耐性を獲得しているメラノーマ細胞の細胞死も誘導できる。本研究の目的は、ZIC5の機能を阻害する低分子化合物を見つけ出し、ZIC5阻害薬が薬剤耐性の減弱に有効であることを示すことである。 これまでに、3396化合物の一次スクリーニングが終了し、37コのヒット化合物を得ている。これら37コのヒット化合物に対して二次スクリーニングを行い、これらの中からZIC5の局在やタンパク量を変化させる化合物を選抜した。また、正常ヒトメラノサイトに対する影響や複数のメラノーマ細胞株に対して細胞死誘導効果を検証した。その結果、2つの化合物にZIC5タンパク質を減少させる作用がある事がわかった。この2つの化合物は、正常ヒトメラノサイトやZIC5低発現メラノーマ細胞に対してはアポトーシスを誘導しないのに対し、ZIC5高発現メラノーマにアポトーシスを誘導した。同時に別ライブラリーのスクリーニングも進めている。 また、酵母two-hybrid 法により約10コのZIC5結合候補タンパク質を同定しているが、それらをクローニングし、メラノーマ細胞内でのZIC5との結合を免疫沈降法で確認した。そのうちの一つのタンパク質を発現抑制するとZIC5により誘導される因子の発現が低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ZIC5の核内存在量を低下させる低分子化合物の同定」を進めた。これまでに、GFP融合ZIC5を使用したスクリーニング系を構築し、3396化合物の一次スクリーニングを行い、37コのヒット化合物を得ている。2次スクリーニングにおいては、タグなしのZIC5を過剰発現させたメラノーマ細胞株を使用し、ヒット化合物を添加後、細胞を固定し、ZIC5の免疫染色を行い、ZIC5のタンパク量や局在に変化を及ぼす化合物を同定した。さらに、これらの化合物が正常ヒトメラノサイトに細胞死を誘導するか、様々なメラノーマ細胞株に対して細胞死を誘導するかを検証した。その結果、2つの化合物は正常ヒトメラノサイトやZIC5発現量が少ないメラノーマ細胞株に対しては細胞死を誘導せず、ZIC5発現の高い細胞株において細胞死を誘導した。また、BRAF阻害薬に対して耐性を獲得したメラノーマ細胞株に対して最もよくアポトーシスを誘導した。上記のことから、このスクリーニング系で目的の化合物を抽出できていることが明らかになったことから、同時に、約1500化合物からなる薬剤ライブラリーと約9000化合物からなる低分子化合物ライブラリーを使用し、同様にスクリーニングを進めている。 また、「ZIC5調節分子をターゲットとする低分子化合物の同定」の為、これまでにZIC5結合タンパク質のスクリーニングを酵母two-hybrid 法で行い、約10個の候補タンパク質を同定している。この中のひとつのタンパク質を発現抑制すると、ZIC5により誘導される遺伝子の発現が減少することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
「ZIC5の核内存在量を低下させる低分子化合物の同定」においては、これまでに得られている2つの候補化合物について、どの様なメカニズムでZIC5タンパク質を減少させているか検証する。また、現在進めているスクリーニングより得られたヒット化合物について、ZIC5抑制作用や他の細胞株(がん細胞や正常細胞)に対する影響を検証する。正常細胞における毒性が低く、多くのがん細胞に有効であることが確認できた化合物に対しては、最終的にマウスを用いたin vivoの実験系における効果を検証する。可能であれば、得られた化合物とZIC5タンパク質との直接の相互作用を検証し、直接相互作用し分解に導くタンパク質を同定したい。直接結合する化合物が同定できれば、結晶構造解析を行い、相互作用部位を同定できる。この情報を基に生体内で安定性が高く毒性が少ない分子に構造展開を進めることで生体内で使用できる化合物を得る事ができる。 また、「ZIC5調節分子をターゲットとする低分子化合物の同定」において、同定したZIC5結合タンパク質に対して、ZIC5の機能に重要であるかどうかを検証する。ZIC5結合タンパク質を発現抑制した際に、ZIC5による遺伝子発現が影響をうけるか検証する。また、ZIC5による薬剤耐性の亢進に寄与するかを検証する。さらに、結合タンパク質との相互作用を阻害した際に各種がん細胞の薬剤耐性が減弱するかを検証する。
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Research Products
(2 results)