2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative historical research on Ryukyuan by using linguistic family trees
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17H06115
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
狩俣 繁久 琉球大学, 島嶼地域科学研究所, 教授 (50224712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木部 暢子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 教授 (30192016)
金田 章宏 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (70214476)
下地 理則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80570621)
白田 理人 志學館大学, 人間関係学部, 講師 (60773306)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
木村 亮介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00453712)
岡崎 威生 琉球大学, 工学部, 教授 (90213925)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 言語系統樹 / 九州琉球祖語 / 琉球語 / 九州方言 / 音素素性 |
Outline of Annual Research Achievements |
琉球語の「花、火、船、へら、骨」の5単語の語頭音節には日琉祖語の*pを含むが、この*pがp、hw、h、p‘、p’、f、k、k‘、N、hN、t‘、sj、sの13個の音素に変化している。琉球語では*pが一定方向に一律に変化するのではなく、結合する母音の広狭・前後などの韻質の違いによって、p>hw>h、p>f>h、p>k、p>t、p>s、p>hw>h>sj、p>hN>N等の多様な音韻変化が見られ、変化の遅速に差があり、13個の音素に変化した。*kについても同様のことを確認した。系統学では左側の音声形式は祖先形質で右側の音声形式は派生形質である。これらのことを踏まえ集団遺伝学の手法で10個の語頭音節のpとkを分析した結果、先行研究が示した方言区分と同じ分岐を示していること、音韻を指標にした集団遺伝学の有効性を確認した。詳細は狩俣繁久,和智仲是,木村亮介(2020)「琉球諸語研究における方言系統地理学の可能性」で論じた。 語彙と文法の面からの研究も行った。稲作農耕に深く関わる稲,米,鎌などの基礎語彙と動詞形態論の根幹をなすアスペクト・テンス体系の形式および文法的意味の分布を検討した。その結果は、北琉球語と南琉球語の大きな南北差が九州からの人の移動の大きな波が2回あったことに由来する可能性を確認した。詳細は狩俣繁久(2019)「言語接触がもたらした琉球語の南北差」。 方言差が大きく多様な音声が観察される琉球語の発音をたくさんの研究者が手書きで記入した調査票データの入力とデータベース化が完了し、全データの数値化を自動化する準備を整えつつある。12冊の琉球語の方言辞典の入力も完了した。さまざまなインデックスを付す作業を実施中である。研究者への公開は一般利用者の公開とは別に認証許可方式で行うがその方式を確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方言差が大きく多様な音声が観察される琉球語諸方言をたくさんの研究者によって手書きされた調査票データの入力に想定以上の労力と時間を要したために、全データの整備・DB化が計画よりも若干の遅れを見せたが、年度内に終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は次の三つの計画から成る。(A)集団遺伝学の手法を適用した汎用性の高い言語系統樹プログラムの開発と研究。(B)系統樹と言語地図を基にした比較言語学的方法による言語形成史の研究。(C)使用する言語DB作成と認証許可方式による研究者への公開、一般への公開。前年度までとほぼ同じ研究押木、研究方法を踏襲して実施する。特に'(A)(B)で作成したデータの解析を中心に進める。 (A)は毎月1回定期的に研究打ち合わせを行って形容詞を進める。 (B)は2020年度内に2回(1回2日間)の全体研究会を開催し、言語系統樹の適否および琉球語内の分岐等を検証する。なお、会合に合わせてシンポジウムを開催し成果の一部を公開するとともに考古学、骨人類学等の関連研究分野の研究者と言語系統樹の結果との整合性等について意見交換する。 (C)は毎週1回定期的に打ち合わせを行い、方言データのDB化の検討、サーバ上のシステムの開発、方言DBおよび解析システムの研究者への公開、および方言辞典の一般への公開方法を検討し、月1回の研究打ち合わせで報告して進めている。
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Research Products
(36 results)