2018 Fiscal Year Annual Research Report
Transmission Muon Microscope by muon microbeam, realizing 3-D Imaging
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17H06126
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
三宅 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別教授 (80209882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永谷 幸則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (00393421)
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60391710)
林崎 規託 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50334537)
荻津 透 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 教授 (30185524)
鳥養 映子 山梨大学, その他部局等, 客員教授 (20188832)
大西 純一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任技師 (30634703)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | ミュオン / 超低速ミュオン / レーザー / 顕微鏡 / 量子可干渉性 / 波動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
光科学・加速器科学と電子顕微鏡学の究極的な融合により、透過型ミュオン顕微法を開発し、「生きた細胞まるごと1個の機能を観る」という新たな顕微鏡イメージングを確立する事を目指している。電子より200倍重いミュオンは、同じ速度で約200倍の試料透過能力を有し、荷電粒子であることから電磁場の可視化能力を有する。再加速エネルギーをあげることにより、超高圧電子顕微鏡をもってしても到達不可能な10 mm厚超領域のトモグラフィ3次元測定、生きた細胞の透過観察を実現することができる。電子顕微鏡と光学顕微鏡の分解能ギャップを埋める全く新しい顕微鏡の誕生を目指している。 表面ミュオン(4 MeV)を、タングステン箔(シリカエアロゲル)に入射すると、真空中に熱化したミュオニウム(正ミュオンと電子が結合した軽い水素状原子、Mu)を発生させるができる。このとき、4 MeVから0.2 eV(0.03eV)までの7-8桁の冷却が行われるにも拘わらず、その収率が4%(7%)と極めて高いことが重要である。 真空中に漂い出てくるMuをレーザー共鳴イオン化法(1s-2p-unbound)により電子を剥ぎ取り、加速・収束することにより、波の性質を持つ超低速ミュオンが得られる。 これまでミュオンは、スピンを持った粒子として、生成・崩壊時の空間反転非対称性を利用する研究に、その用途が限られてきたが、本研究の本質は、超冷却・再加速により、時間・空間コヒーレンスに優れた高輝度ミュオンマイクロビームを創成しミュオンの粒子性と波動性の2面性を実証するとともに、これを駆使した新しい顕微法を確立する事を目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A) 超低速ミュオン再加速技術の開発: 予算的制約から加速能力を10MeVから5MeVへと変更したが、当初目標通りの1/100000の安定度のサイクロトロンの詳細設計に成功し、主要2020年秋のビームタイムに合わせて稼働予定であり、予定通り進んでいる。具体的には2017年度に基本設計を行い、2018年度から詳細なシミュレーションに基づく物理設計を開始し2019年中に完了させ、2019年度中にサイクロトロンを構成する機器の製造を完了した。残りの項目は、組み立て、搬入、磁場測定(2020年5月中)、RF調整(2020年~9月)、ビーム試験(2020年秋)となっている。ビームコミッショニングが終わり次第、透過型ミュオン顕微イメージングを開始する。
(B) 超伝導対物レンズの開発: 日本電子より超伝導対物レンズを供与され、極低温化での再起動試験を実施している。1980~90年代の技術の復活のため一部に技術情報の散逸があり、クエンチ等の装置の故障を避けるため慎重に再起動実験を実施しているため、当初予定よりも半年ほどの遅れがあるが、期間内の開発には問題とならない見込みである。
(C) 透過ミュオンイメージング手法の確立: 計画の当初に、ミュオンビームを結晶薄膜に透過させ回折像を取得するミュオン回折実験を実施し、超低速ミュオンの可干渉性を証明する予定であったが、レーザー装置のトラブルによりミュオンの強度が小さく遅れている。しかしながら、レーザーイオン化水素ビームを調整の補助に用いる手法と弱い強度のミュオンを長時間積分する方法により、2020年度の始めころに実現する見込みである。本格的な透過ミュオン顕微鏡の実験に使用する試料ステージなどは既に出来ており、ミュオン回折実験に使用している。
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Strategy for Future Research Activity |
ミュオンの波動性の証明を2020年度の初期に達成させる。すでにミュオン回折像の回折スポット位置にミュオンを検出しており、その兆候は捉えている。実験装置の長時間運転により統計を貯め確定させる段階であり、時間の問題で成果が得られる見込みである。 透過型ミュオン顕微鏡のための超低速ミュオン再加速方式を比較検討し、フラットトップRFサイクロトロンを採用した。研究計画調書に記載した誘導加速マイクロトロンでは、詳細設計の結果、加速に要する時間が10μ秒程度とミュオンの寿命(2.2μs)に比べ長くなってしまいビームが大きくロスしてしまう問題が判明した。比較検討の結果、フラットトップRFサイクロトロンは加速に要する時間が1μs程度と最も短く、効率的にミュオンを加速できる事に加え、エネルギーの安定性もΔE/E~1/100000台に入る設計が可能と判明した。さらにフラットトップRF方式のサイクロトロンは多くの加速器施設で導入されており、実績のある技術でもある。基本設計・詳細設計をKEK・理研・住友重機械工業社の共同で実施し、2019年度にサイクロトロンを構成する電磁石やRF空洞などの製作を完了した。2020年度のJ-PARCへの据え付けに向けて、電源・冷却水・入射ライン・出射ライン・架台などの準備が進んでいる。 本研究期間の終了までに、透過ミュオン顕微鏡を完成させ、透過ミュオン顕微鏡によるイメージングが確立することは確実である。装置の本格稼働は2020年11月のビームタイム開始時点を予定している。予算的制約により再加速のエネルギーを当初予定の10MeVから5MeVに落さざるを得なかったが、それでもなお超高圧電子顕微鏡では観察できない厚さ領域を観る事ができ、多数の実用材料の観察を観察する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] First muon acceleration using a radio-frequency accelerator2018
Author(s)
S. Bae, H. Choi, S. Choi, Y. Fukao, K. Futatsukawa, K. Hasegawa, T. Iijima, H. Iinuma, K. Ishida, N. Kawamura, B. Kim, R. Kitamura, H. S. Ko, Y. Kondo, S. Li, T. Mibe, Y. Miyake, T. Morishita, Y. Nakazawa, M. Otani, G. P. Razuvaev, N. Saito, K. Shimomura, Y. Sue, E. Won, T. Yamazaki
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Journal Title
PHYSICAL REVIEW ACCELERATORS AND BEAMS
Volume: 21
Pages: 050101(1-6)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Re-Acceleration of Ultra Cold Muon in J-PARC Muon Facility2018
Author(s)
Y.Kondo, K.Hasegawa, T.Morishita,M.Otani, Y.Fukao, K.Futatsukawa, N.Kawamura, T.Mibe, Y.Miyake, K.Shimomura, T.Yamazaki, M.Yoshida,R.Kitamura, S.Li,Y.Nakazawa, H.Iinuma,Y.Sue, T.Iijima,K.Ishida,N.Hayashizaki,Y. washita,Y.Iwata,N.Saito,S.Bae, H.Choi, S.Choi, B.Kim, H.S.Ko,E.Won,G.P.Razuvaev,Pulkovo Observatory
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Journal Title
IPAC 2018
Volume: 2018
Pages: 5041-5046
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] J-PARCにおける超低速ミュオンビームのコミッショニング状況62019
Author(s)
足立泰平, Amba Datt Pant, 池戸豊, 大石裕, 中村惇平, Patrick Strasser, 伊藤孝, 髭本亘, 牧村俊助, 河村成肇, 下村浩一郎, 門野良典, 三宅康博, 鳥養映子
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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[Presentation] J-PARCにおける超低速ミュオンビームのコミッショニング状況52018
Author(s)
足立泰平, Amba Datt Pant, 池戸豊, 大石裕, 中村惇平, Patrick Strasser, 伊藤孝, 髭本亘, 牧村俊助, 河村成肇, 下村浩一郎, 門野良典, 三宅康博, 鳥養映子
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
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[Presentation] 透過型ミュオン顕微鏡のためのミュオンサイクロトロンの開発2018
Author(s)
山崎高幸, 永谷幸則, Patrick Strasser, 下村浩一郎, 三宅康博, 安達利一, 吉田光宏, 林崎規託, 大西純一, 奥野広樹, 後藤彰, 楠岡新也, 筒井裕士, 密本俊典, 熊田幸生
Organizer
日本物理学会 2018年秋季大会
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