2018 Fiscal Year Annual Research Report
The development of innovative nitrification and denitrification process using anoxygenic phototrophic bacteria
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17H06243
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
花田 智 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (10357791)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 酸素非発生型光合成 / 嫌気的アンモニア酸化 / 硝化 |
Outline of Annual Research Achievements |
松島(宮城県)の海岸の海水を分離源とした培養で、アンモニア酸化酸素非発生型光合成細菌の増殖が認められた。寒天の代わりにゲランガムをゲル化剤として用いた平板培養を行ったところ、当該酸素非発生型光合成細のコロニーの出現が確認でき、且つゲル化剤の溶解は見られなかった。ただ、光合成色素を持たない細菌のコロニーが常に近傍に形成され、それは何度画線を繰り返しても解消されることはなかった。そこで、海洋性紅色硫黄細菌培養用の硫化水素を含むPfenig培地を用いての平板培養に切り替えたところ、当該光合成細菌の単一コロニーの獲得に成功することができた。しかし、このコロニーをアンモニア酸化条件の見られる無機培地に植菌したところ、依然として非光合成細菌が共存するコンソーシアムであることが16Sアンプリコン解析から明らかとなった。本コンソーシアムにおいて明らかなアンモニア消費は見られているが、亜硝酸や硝酸の増加が見られないことから、光合成細菌が酸化したアンモニアが共存する非光合成細菌によって再還元されているという「閉じた窒素循環」があると予想した。亜硝酸を過剰に添加した培養において、光依存的なアンモニア酸化と硝酸の増加が明確に見られたことから、非光合成細菌の硝酸還元活性は亜硝酸によって阻害され、その結果、硝酸の蓄積が認められたものと結論した。 同様のアンモニア酸化酸素非発生型光合成細菌の増殖が、温泉を分離源とした高温培養(55℃)や淡水の沼を分離源とした中温培養(28℃)においても認められており、光による嫌気的アンモニア酸化が海洋に限定されておらず、様々な環境中で見られることが明らかとなった。これら淡水性のアンモニア酸化酸素非発生型光合成細菌は海洋性のものとは異なり、寒天平板培養にて容易に分離培養することができそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海洋性の嫌気的アンモニア酸化能を有する酸素非発生型光合成細菌の分離培養が予想を超えて難航している。当該細菌は、紅色細菌に存在する光合成光化学反応中心タンパク質の遺伝子配列(pufLM)から、海洋性紅色硫黄細菌であるMarichlomatium属細菌に近縁なものであることが明らかとなっているが、GTGアガロース平板培養を用いた分離培養では、海洋性の非光合成細菌の増殖も同時に見られ、且つGTGアガロースの溶解が起きていることが確かめられたことから、ゲル化剤をゲランガムに変更し平板培養を開始した。しかし、共存する非光合成細菌の増殖が同時に起き、コロニー釣菌での分離培養は困難であるという他はない。ただし、ゲランガム平板培地に形成されたコロニーを分離源とした複数種を含む液体培養(嫌気的アンモニア酸化コンソーシアム)は安定的に維持できることから、この複合微生物系培養物を対象とした嫌気的アンモニア酸化の研究を行うこととした。複合微生物系培養物であっても、16S rRNAアンプリコン解析等で構成細菌は解明できる。また、バルクでのアンモニアの消費(酸化)、や亜硝酸・硝酸の増加は確認可能である。 なお、温泉や湖沼といった淡水環境を分離源とした培養では、海洋に比べ酸素非発生型光合成細菌の分離は容易であり分離菌株株を取得できた。これに関しては、純粋分離菌株の液体培養物でのアンモニアや亜硝酸・硝酸の定量を行う事ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)海洋性の嫌気的アンモニア酸化コンソーシアム 酸素非発生型光合成細菌が酸化したアンモニアが共存する非光合成細菌によって再還元されているという「閉じた窒素循環」があると予想される嫌気的アンモニア酸化コンソーシアムの主な構成微生物は16Sアンプリコン解析の結果、当該酸素非発生型光合成細菌Marichromatium sp.に加え、Shewanella algae、Vibrio fluvialis、Pseudomonas sp.であることが明らかとなっている。このコンソーシアのDNAを抽出し、メタゲノム解析を今年度は行う。酸素非発生型光合成細菌によるアンモニア酸化は、従来の好気性アンモニア酸化細菌が用いているアンモニアモノオキシゲナーゼではなく、他の酵素であると予想できる。何故なら、アンモニアモノオキシゲナーゼは酸素存在下でのみ働く酸素付加酵素であり、嫌気条件下では機能しないものだからである。それに代わる候補遺伝子として、亜硝酸・チトクローム酸化還元酵素を挙げることが出来るだろう。メタゲノムからその存在が明らかとなることを期待している。 2)淡水性嫌気的アンモニア酸化酸素非発生型光合成細菌 温泉や湖沼といった淡水環境を分離源とした培養で嫌気的アンモニア酸化酸素非発生型光合成細菌の分離株を取得できている。これらのアンモニア酸化とその生成物(亜硝酸・硝酸)の経時的な変化を明確に示すとともに、それに関係する酵素の推定をゲノム解析に基づいて行う予定である。
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Research Products
(2 results)