2017 Fiscal Year Annual Research Report
虫こぶはなぜできる？：昆虫が持つ植物発生プログラムハッキング能力の謎に迫る
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17H06260
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| Research Institution | Kyoto Prefectural University |
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Principal Investigator |
大島 一正 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (50466455)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅彦 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20283575)
大坪 憲弘 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30270474)
武田 征士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (90508053)
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| Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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| Keywords | ゴール形成の分子機構 / モデル植物 / 生理活性評価系 / 寄主植物培養系 / トランスクリプトーム / メタボローム / ホソガ科 / アブラムシ科 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
虫こぶは，昆虫などが植物に作る特徴的な形態を持つ器官である．通常植物はこのような器官を作らず，虫こぶ形成昆虫が植物発生システムを操作し，自身に都合の良い器官形成を誘導している．この分子メカニズムを探るために，虫こぶ形成昆虫とホスト植物の誘導・レスポンス機構に着目し，(1) 昆虫と虫こぶからのRNA抽出とRNA-seqによるトランスクリプトーム解析，(2) 虫こぶと昆虫の植物ホルモン解析及びメタボローム解析，(3) パラフィン切片による虫こぶの組織学的解析を進めた．さらに植物側の分子メカニズムを深く掘り下げるため，(4) モデル植物を用いた発現比較を (5) ホスト植物を用いた発現解析と組み合わせ，(6) 虫こぶ形成に関与する遺伝子群の抽出および機能的ネットワーク解析，(7) 形質転換体を用いた虫こぶ形成に関与する遺伝子の解析を実施した．虫こぶ形成昆虫抽出液の生理活性評価システムとその利用モデルの構築では，トレニアとタバコの芽生えで虫こぶ形成昆虫の抽出液の培地への添加により葉身の拡大や根および根毛の増長など共通の初期生育促進効果を確認したほか，効果がより明確に現れる培養条件を見出した．ホスト植物の培養系構築では， 無菌培養と新梢の誘導が可能となったが，発根率の向上が次年度の課題として残る種がある一方， 滅菌種子から効率よく均質化植物を得る培養条件を見出し，挿し芽による発根・増殖が可能となったホスト植物もあり，今後の研究展開が期待される．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いている幼虫期の途中から突如虫こぶ形成を開始する昆虫種及びそれらが形成する虫こぶを用いたトランスクリプトーム解析が順調に進んでいる．虫こぶと，虫こぶ形成昆虫の植物ホルモン解析を行い，昆虫に高濃度のオーキシン・サイトカイニン等 が含まれることが分かった．各種実験系の虫こぶについて切片作成を行い，突如始まる虫こぶ形成の過程を組織学的に詳細に 観察した．モデル植物を用いた実験系で 遺伝子の発現比較を行い，昆虫抽出液処理時に発現が変化する遺伝子を多数同定した．また本来のホスト上での虫こぶ形成前後でもRNA-seqを行い，発現上昇している転写因子群を特定した．さらにモデル植物とホスト植物での結果を比較し，発現変動が類似している遺伝子を抽出し，両者で共通に発現が変化している遺伝子を複数同定した．現在，モデル植物の変異体を用いた解析が進行中である．生理活性評価システムでは，上記のほかキクを含む葉片や茎切片，発芽後の幼植物でも同様の結果が得られつつあり，当初の目標である「植物種を超えて普遍的な」生理活性の評価系確立に大きく近づいた．これに加え，一部のホスト植物で培養系が動き始めたことで，ゴール形成に関わる植物側の応答を本来の宿主と非宿主の両面からより精密に解析・評価することが可能となり，ゴール形成機構の早期解明と利用に繋がると期待できる．以上を総合的に判断し，当初の計画通り順調に研究が進行していると判断した．
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| Strategy for Future Research Activity |
今年度開発に成功したAb-GALFA法を用いて，ゴール形成に必要な昆虫側のエフェクター分子を単離・同定する．特に，幼虫期の途中から突如虫こぶ形成を開始する昆虫種を用いた解析を集中的に行う．昆虫抽出液の植物生理活性については，最も効果的な作用時期を同定するとともに，ゴール形成期特異的な応答であることをより広範な植物種で確認する．これらに加え，虫こぶ形成時のホスト植物側の分子メカニズムを探る研究も重点的に進める．
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