2018 Fiscal Year Annual Research Report
代謝産物を介した多細胞間ネットワークの統合的解析による臓器機能in toto把握
Project/Area Number |
17H06270
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40252457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (50378759)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | マスイメージング / メタボローム / 代謝産物 / 急性腎不全 / 代謝変容 / ATP / アデニンヌクレオチド |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの検討で、組織内の代謝産物(メタボライト)を1ピクセル40マイクロメートルの精度で網羅的に定量し可視化する新しい研究手法である、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法マスイメージング(MALDI-IMS)を用いて、腎内に分布する代謝産物ひとつひとつを可視化することに成功した。本研究では、マウス腎動脈クリッピングによる10分間の短時間虚血によるAKIにおける、腎エネルギー代謝産物の変容を、MADI-IMSにて検討した。45分間の腎動脈虚血再灌流による腎障害では、ROS産生の亢進が顕著となり、その結果として腎間質の線維化と腎機能低下が生じると考えられている。一方、今回我々が検討した10分虚血再灌流では、ROS産生は顕著ではなく組織学的な腎障害はないものの、尿中Na排泄分画(FeNa)低下を特徴とする腎機能低下を認めた。このことから腎Na再吸収を駆動する腎エネルギー代謝の低下が示唆されたので、マスイメージングを用いて10分虚血に伴うエネルギー代謝の変容を腎臓の部位別に可視化解析した。正常腎ではミトコンドリアによる酸化的リン酸化が盛んな部位である皮質優位のATP分布を呈しており、嫌気代謝が主体である髄質内側ではATP低値であった。10分間の短期虚血で近位尿細管が分布する皮質および髄質外側線条(OSOM)ではATPが低下し、総アデニレート(ATP+ADP+AMP)の喪失を生じたが、髄質内側線条(ISOM)および髄質内側では総アデニレートの喪失は生じなかった。10分虚血後24時間の再灌流による腎皮質およびOSOMでの総アデニレートの回復は、虚血前の80%程度にとどまり、その結果として再灌流後もATP低下が遷延した。これらの所見から、ROS亢進が顕著ではない短期虚血に伴うAKIの新しい治療戦略として、虚血に伴い喪失した腎皮質の総アデニレートの改善が有用と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、腎疾患発症に関与する代謝変容を明らかにしてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
腎疾患発症に関与する、腎代謝変容を制御する方法の開発に取り組む。
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Research Products
(10 results)