2017 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウム複酸化物ナノ材料の構造・粒径制御と二次電池正極特性に関する研究
Project/Area Number |
17H06515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 弘明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90804427)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 二次電池 / 正極材料 / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネシウムイオン存在下で過マンガン酸イオンをアルコールで還元し、マグネシウム-マンガン複酸化物を合成した。合成条件の検討の結果、複酸化物は室温で合成可能であり、第1級、第2級アルコールが使用可能であった。X線回折パターンより含水条件ではトンネル型構造、脱水条件ではスピネル型構造の複酸化物が得られることを見出した。これら複酸化物の一次粒子径は約2~3 nmと極めて小さかったが、凝集により1 μm以上の大きな二次粒子を構成することが明らかとなった。 スピネル型構造を有する複酸化物試料、導電助剤、結着材から成る正極、多孔炭素負極、Ag/Ag+参照電極、過塩素酸マグネシウム-アセトニトリル電解液から成る電気化学セルを作製し、室温での二次電池正極特性を評価したが、電気化学的酸化還元反応はほとんど進行しなかった。本試料の二次粒子が大きく、試料の大部分が充放電に利用できなかったことが原因と考えられる。 凝集抑制による正極特性の向上を目指し、試料合成時に導電助剤のグラフェンと複合化させた試料を作製した。電子顕微鏡観察から複酸化物の凝集が抑制されていることが示唆された。この複合体試料を用いた電気化学セルを作製し正極特性を調べた結果、室温で200 mAh/g以上の可逆な充放電が進行し、マンガンのK吸収端X線吸収微細構造測定からマンガンの1電子酸化還元反応が可逆に進行することが明らかとなった。また本複合体試料は室温で1時間での高速充電あるいは放電が可能であり、高い出力特性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画通り、アルコール還元プロセスによりマグネシウム-マンガン複酸化物を合成し、キャラクタリゼーション及び二次電池特性評価を実施した。特に一次粒子径2~3 nmのスピネル型構造を持つ複酸化物とグラフェンとの複合体正極においてマンガンの1電子酸化還元反応が進行し、また室温で1時間での高速充電あるいは放電が可能であることを明らかにした。以上を踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で詳細に検討を進めたマグネシウム-マンガン複酸化物ナノ材料に関しては、導電助剤として複合化させるグラフェン量の低減や電解液の検討により電池性能のさらなる向上が期待できる。グラフェン量の低減に関しては複酸化物粒子表面へ高効率にグラフェンを被覆させた複合体の作製を狙う。電解液の検討に関しては、電極表面に良好なSEI膜を形成させるための添加剤の検討、高温動作を志向したイオン液体系を検討する。また、本研究で用いる低温処理プロセスは高価数の金属イオンをアルコールで還元析出することにより酸化物を得る手法であり、マンガン以外にもクロム、ルテニウムなどの高価数の塩が安定に存在する金属種に対しても適用可能であると考えられる。特にクロム酸複酸化物は高電圧動作が可能な正極材料として有望であり、スピネル型複酸化物を合成し正極特性評価を行う。
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Research Products
(2 results)