2017 Fiscal Year Annual Research Report
レニン-アンギオテンシン系因子関連性脳萎縮:認知症発症予測モデルの構築
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17H06523
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 学 東北大学, 加齢医学研究所, 分野研究員 (40800983)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 生理学 / 放射線 / 老化 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では先行研究で脳萎縮との相関関係が見出されているレニン・アンギオテンシン系 (RAS)の新規構成因子である可溶性プロレニン受容体(sPRR)に着目し、RAS 因子の脳萎縮への関与とその作用機序を検討し、 プロレニン受容体(PRR)による脳萎縮という観点に立脚した認知症をはじめとする脳疾患予防・治療戦略の基盤を構築することを目的としている。 その目的のため、1)健常者における脳萎縮度と血中 sPRR 濃度の相関解析の検討、2)脳萎縮をきたす疾患(認知症)患者における体内 sPRR 動態と脳萎縮の関連性の検討を研究計画としていた。 H29年度は1)の研究開始、それに加えてPRRと脳発達との関連性を検討するために3つ目の研究計画として3) PRR遺伝子一塩基多型と脳形態・認知機能の関連性を検討した。 1)に関しては先行研究である大迫研究データベースの被験者の脳MRI画像データをMOより抽出し、解析可能なDICOMフォーマットへの変換を行なっている。 3)に関しては健常成人被験者1292人を対象にPRR一塩基多型(SNP)を測定し、多型が脳形態・認知機能に与える影響を検討した。被験者は東北大学加齢医学研究所認知機能発達分野 竹内光 准教授の保有する脳MRI画像、唾液サンプル、心理検査結果の提供をうけて実施した。一塩基多型は唾液より抽出されたDNAを用いてPRR遺伝子多型を測定し、脳形態は撮像されたMRI画像をVBM法を用いて解析を行った。認知機能は各種の心理検査調査紙の結果をもとに集計した。これによりPRR遺伝子の一塩基多型rs6609080においては両側基底核領域の灰白質体積および流動的知性への影響が示唆された。本結果はPRRが脳発達へ関与を示す新規知見であり、RAS 因子に着目した認知症をはじめとする脳疾患予防・治療戦略の基盤を構築する上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年度より大迫研究データベース被験者の脳MRI画像と血中可溶性プロレニン受容体(sPRR) 濃度を用いて脳萎縮度や認知心理検査スコアの変化率、要介護発生情報などをアウトカムとしてRAS因子の生理的脳萎縮を探る方針としていた。しかし脳MRI画像の解析開始には至ったが、sPRR濃度測定は準備段階であり開始が遅れている。 一方で、プロレニン受容体(PRR)の一塩基多型(SNP)と健常成人の脳形態の変化に関して解析を行い、PRRの一塩基多型 +1513A>G (rs6609080)においては脳形態や認知機能に影響があることが示唆された。PRRと脳発達との関連性を示す新規の知見であり、この結果は学会発表、論文投稿が予定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗が遅れている大迫研究データベース被験者の脳形態の解析、sPRR測定に関しては継続してはH30年度も継続して遂行していく予定である。 H30年度には認知症患者における体内のsPRR 動態と脳萎縮の相関関係を検討する予定である。 また、現在研究が進行しているPRR遺伝子の一塩基多型と脳発達との関連性に関して研究を継続していく。 認知症患者での実施困難や大迫研究での被験者の採血・髄液データの収集が困難な場合は脳発達とPRR・sPRRの関連性を検討するために健常成人被験者を用いた解析を検討する。
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