2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of molecular structure of polysaccharides from beans and research on physical properties in foods
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17H06538
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中村 彰宏 茨城大学, 農学部, 准教授 (00803735)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 多糖類 / 食品 / 原子間力顕微鏡 / 分子構造 / 物性機能 / 機能改変 / ナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の化学的、物理化学的手法では煩雑な操作と時間を要した多糖類の分子構造を原子間力顕微鏡(AFM: Atomic Force Microscope)を用いて短時間且つ高精度に解析し、同時に多糖類の食品における物性機能を解析することで、分子構造と機能の相関図を作成するものである。 本年度の研究では、世界で広く栽培される豆類を入手し、エンドウ豆、インゲン豆、並びにレンズ豆から豆類多糖類を抽出する条件の検討を行った。まず、豆を水浸漬して膨潤し、内皮を除去した後、ホモミキサーで高速撹拌して豆乳を得た。豆乳を遠心分離して多糖類を含む繊維質(細胞壁成分)を回収した。この食物繊維を原料にpH3-9の条件下で多糖類の抽出を行った。多糖類の抽出は、繊維に混在する蛋白質の性質の影響を受けるが、pH4-5, 110-120℃の高温加圧条件下で、繊維あたり30-45%の高収率で抽出できることを見出した。 また、AFMを用いて抽出した豆類多糖類の分子構造の解析を行った。本年度は、エンドウ豆多糖類とインゲン豆多糖類のAFMによる構造解析の条件を確立し、分子構造に関する新しい知見を得た。エンドウ豆、インゲン豆ともに大豆と同じく多分岐構造を持つ。エンドウ多糖類は大豆多糖類と同程度の分子サイズであり、直径50nm、推定分子量30万であった。一方、インゲン豆多糖類は直径110nm、推定分子量120万の巨大分子であると推定された。更に、インゲン豆多糖類は巨大な多分岐多糖類に加え、直鎖構造を持つ多糖類も混在し、極めてヘテロな構成を持つことが明らかになった。 現在、レンズ豆多糖類のAFMによる構造解析を進める同時に、これら豆類多糖類の物性の解析、並びに、食品での物性機能として乳酸菌飲料の乳蛋白質の凝集抑制と分散機能について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究支援により、試料を凍結乾燥することが可能になった為、試料の調製に要する時間を大幅に短縮することが可能になった。また、複数の試料を同時に凍結乾燥できる為、豆類多糖類の抽出条件の網羅的な検討も可能になり、当初の計画より早く研究が進んだ。一方、分子構造を解析するAFMは所属機関にはない為、近隣の企業研究所で貸して頂いている。先方での使用の合間をぬっての使用であった為、レンズ豆の構造解析が未着手であり、調製した豆類多糖類の全ての構造解析を本年度中に終わらせることが出来なかった。但し、平成30年度中には解析は完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って研究を進める。 ・分子構造の解析:AFMによるレンズ豆多糖類の構造解析を進め、主要な豆類多糖類の分子構造の解析を完了する。 ・食品における物性機能の解析:大豆多糖類の研究で構築した乳酸菌飲料の評価系を用いて効率よく乳タンパク質の分散安定化機能を解析する。脱脂粉乳をL.casei株で発酵して発酵乳を調製し、加熱溶解した豆類多糖類の水溶液と砂糖溶液を混合した後、高圧ホモジナイザーを通して酸性乳飲料を調製する。4℃で6カ月間保存し、質粒子の粒子系、ブラウン直径、沈殿率、粘度と粘度特性を経時的に測定して安定性を評価する。 ・構造、物性、機能の相関の解析:物性(ニュートン&非ニュートン流体などの粘度特性)と乳蛋白質の安定性に対する豆類多糖類の構造(分子サイズ、直鎖、部分分岐、多分岐など)の相関を解析する。 尚、現在訪問して使用しているAFMの先方での使用状況により、当該装置がなかなか使用できない場合は、隣接する物質材料研究機構を訪問し、同機器を使用することで、研究を完遂する。
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Research Products
(2 results)