2017 Fiscal Year Annual Research Report
デジタル技術の活用により漆芸の持続可能性を高めた次世代乾漆技法の提案
Project/Area Number |
17H06671
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
今井 美幸 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (40808309)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 乾漆 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、木心乾漆技法の内部構造に最先端の3D切削技術を取り入れ、薄く複雑な形状の木心を成形することで、脱乾漆技法の特徴である軽さと自由な造形、丈夫さを兼ね備え、さらに制作のスピード化をはかることを検証する。本研究は、3D切削機を用いて表裏を薄く成形した木材の芯を利用すると、作品自体は多少厚みが増すものの、軽い木材を選び、成形方法を工夫することで重量面では重くならず、軽量という脱乾漆技法の特徴は維持されるとの考えから着想し、軽量さ、丈夫さ、そして自由な造形という乾漆技法の特徴を薄い木材を使用することによって伝統を発展させる事を目的に、漆樹液の利用をおさえつつ、作業効率、強度面、重量面で脱乾漆技法の代用となりうるかを検証する事に意義をおいている。 現段階は、初年度のため、研究を始めるにあたり使用する道具や材料、備品の購入と準備、3D切削、3D造形やシステムの調査を行い木材の3D切削や3Dプリンターでの出力を行う上での情報収集と乾漆造形や漆芸の情報収集を行った。また乾漆技法で制作された彫刻や箱などに代表される工芸品の調査のために京都、奈良へ行き、漆と麻布で造形された作品が今もなお現存し、状態が保たれている強度と乾漆造形で制作された意図を改めて再認識した。 制作においては、芯となる木材の3D切削技術の習得を行っている。木心に貼る布は形状に適した布の検証を行い、木心に布を貼り制作した作品と麻布や絹のみの脱乾漆との相違点を探っている。 脱乾漆技法では、麻布に変わり、シルクと和紙の併用で自由な造形と強度の研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究を始めるにあたり使用する道具や材料、備品の購入と準備、3D切削、3D造形やシステムの調査を行い木材の3D切削や3Dプリンターでの出力を行う上での情報収集と乾漆造形や漆芸の情報収集を行ったため、必要材料、備品などは揃いつつある。 また乾漆技法で制作された彫刻や箱などに代表される工芸品の調査のために京都、奈良へ行き、漆と麻布で造形された作品が今もなお現存し、状態が保たれている強度と乾漆造形で制作された意図を改めて再認識した事により、改めて薄い木心による木心乾漆技法の発展の意義を感じた。 制作においては、芯となる木材の3D切削技術の習得を行っていが、予想以上に技術習得に時間を要しているため、切削には達していないが、布(麻布、絹)や和紙による研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年の検証・研究・・・漆芸品は経年変化があるため、平成29年度の作品を観察し、杢目や布目が出てきていないかなどを検証する。また、乾漆技法のみの作品との相違点も探る。 (2)作品調査・研究・・・実際に制作した上で再度、木心乾漆像の調査のために京都・奈良に行く。また漆文化が残っているカンボジアの漆器調査もおこなう。 (3)作品制作・・・図案を複雑にしたものでさらに研究を進める。形によっては布が浮いてしまうので、最適な布を選び、慎重に作業を進める。 (4)技法・・・3D切削機で今年度中に、木の切削を行う。また、樹脂による3D切削した物へ漆の塗布を行い、漆の表面への影響を研究する。3D技術の習得には時間を要するため、外部発注も含め検討していく。
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