2017 Fiscal Year Annual Research Report
『阿弥陀房抄』および延暦寺論義書の基礎研究―学僧ネットワークの系譜―
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17H06827
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷川 裕峰 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (60802361)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 論義 / 義科書 / 宝地房 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で扱う『阿弥陀房抄』は各研究機関に散在しているが、本科研費調査では、以下の6つ(①叡山文庫所蔵、円覚蔵・内典・6-149『阿鈔』(全19冊)、②叡山文庫所蔵、真如蔵・内典・13-16『阿抄』(全13冊)、③叡山文庫所蔵、天海蔵・内典・12『義科抄』(全90冊)の内に点在、④西教寺文庫所蔵、正教蔵(27冊程度)=国文学研究資料館にマイクロ資料として所蔵、⑤妙法院門跡所蔵(29冊程度)、⑥早稲田大学図書館教林文庫所蔵)を考察対象とした。 上記の内、29年度科研費においては、①④⑥の3系統について文書調査を行い、資料収集を行った。加えて、全国にある学問寺院(談義所)の現地調査も実施し、本史料群の書写系統を探る一助とした。その結果を、以下の(a)招待講演・(b)口頭報告・(c)論文等において発表することが出来た。(a)「中世における天台論義書の一系譜―『阿弥陀房抄』を中心に―」(研究代表早島大祐「中世後期守護創建禅院の基礎的研究―国菩提寺と京菩提寺―」(科学研究費基礎研究(B))研究集会(2017.09.02、於京都女子大学))/「中世における天台論義書の一系譜―『阿弥陀房抄』を中心に―」(BARC(アジア仏教文化研究センター)2017年第2回学術講演会(2017.11.02、於龍谷大学大宮学舎))、(b)「『阿弥陀房抄』に関する一考察 ―『廬談』との関係を中心に―」(平成29年度第2回文研例会(2017.10.12、於叡山学院))/「中世延暦寺における論義書の一系譜」(第59回天台宗教学大会(2017.10.27、於大正大学))、(c)「南北朝期延暦寺における探題職の一側面」(『叡山学院研究紀要』40、p.47~p.69、2018年) 以上、本資料群から、当時の天台学における最高水準であった探題職が残した論文集としての性格を読み取ることが可能なのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各資料群を文書調査するにあたり、複写許可申請等が順調に進み、確実に手元資料として集積できている。さらに、それらの調査に基づき、考察・比較検討を進め、機会を捉えて各学会等で報告を行うことも可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で挙げた本課題の対象資料群の内、本年度は昨年度において調査できなかった残 りの②③⑤について資料調査を本格化したい。また、引き続き翻刻作業を進め、各資料群の比較検討を行う。特に、本年度は翻刻補助として何名を雇い、分担しながら翻刻作業を進める計画である。さらに、これらの資料群が各地に分散した経緯を解明する一助として、全国にある学問寺院(談義所)の現地調査も盛んに行わなければならないと考える。これらの考察を総合することで、『阿弥陀房抄』の正確な把握が初めて可能になると思われるからである。 それに基づいて、宝地房証真学派の思想的特徴や中世における学僧ネットワークの解明に邁進し、より実証的な基盤の確立を目指す。これは同時に、信長の焼き討ち後の比叡山復興運動が果たした教学的意義を明らかにするという今後の課題へつながるのである。
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Research Products
(2 results)