2017 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞の細胞周期とエピゲノム制御を標的とした治療法の探索
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17H06895
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹立 恭子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 研究員 (00806557)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / Geminin / 未分化性維持 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム複合体1とHoxは白血病幹細胞の活性維持にも必須である。従って、申請者の研究グループが見出したこれらの因子によるGemininの発現制御機構が白血病幹細胞の活性をも支持していることが予想されたため、まず急性白血病のモデルとしてMLL-AF9、Hoxa9+Meis1a、慢性白血病のモデルとしてBCR-ABLの各遺伝子をGeminin-EYFPノックインマウスの骨髄由来の未分化造血細胞に、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターにより導入し、致死的放射線照射を施したマウスに移植し白血病を発症させ、Geminin-EYFPの発現強度を調べた。次に、この白血病マウスの骨髄細胞を採取し、それぞれの白血病幹細胞分画とされている細胞群を、Geminin-EYFPの発現強度により分取した。さらに、Geminin-EYFPノックインマウスを用いた骨髄細胞白血病発症モデルマウスから白血病幹細胞の分画を回収し、この細胞を次世代シークエンサーにかけて、Gemininの発現動態と相関して特異的な発現動態を示す遺伝子を同定した。そして、申請者が確立しているGemininに対するshRNA発現レトロウィルスを用いてGemininの発現、白血病幹細胞のGemininの発現を制御し、標的遺伝子の発現を解析することで、この遺伝子がGemininの制御下にあることを検証した。またMLL-AF9やHoxa9+Meis1aによる自己複製能や静止期維持など白血病幹細胞の活性を付与する分子イベントにおいてのGemininの直接的、あるいは間接的な標的遺伝子を同定した。併せて細胞生物学的手法では細胞周期制御因子について、免疫染色やDuolink法によって細胞周期の同定を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白血病の発症・進行は、白血病幹細胞と呼ばれるごく少数の細胞集団によって支持されていることが近年明らかにされつつある。白血病幹細胞は自己複製能とともにすべての白血病細胞を生み出す能力を持ち、静止期を維持することによって薬剤抵抗性を持つことが知られている。本研究は、未だ実現しない白血病幹細胞を標的とした治療法の探索を目的として研究を遂行している。そこで治療法の開発には、細胞周期制御(特に G0-G1 制御)とエピゲノム制御の理解が重要であると考え、その両方を制御するタンパク質であり、静止期と活動期の白血病幹細胞を分画するマーカーでもあるGeminin に着目し、Gemininの発現動態を可視化することのできるGeminin-EYFPノックインマウスを用いて、本年度は静止期にある白血病幹細胞の性状の同定を行った。急性白血病のモデルとしてMLL-AF9、Hoxa9+Meis1a、慢性白血病のモデルとしてBCR-ABLの各遺伝子をGeminin-EYFPノックインマウスの骨髄由来の未分化造血細胞に、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターにより導入し、致死的放射線照射を施したマウスに移植し白血病を発症させ、Geminin-EYFPの発現強度を調べた。次に、この白血病マウスの骨髄細胞を採取し、それぞれの白血病幹細胞分画とされている細胞群を、Geminin-EYFPの発現強度により分取し、生化学的・細胞生物学的に解析を行うことができた。来年度は白血病幹細胞特異的な CP-Geminin の過剰発現誘導法を開発し、その白血病再発予防効果を急性骨髄性白血病 (AML) 治療モデルマウスにて検証を行い、本研究の知見をもとに新たな白血病治療法の開発に向けた分子基盤の確立を目指したいと考えている。以上、研究計画は概ね順調に進めることが出来ていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は白血病幹細胞特異的な CP-Geminin の過剰発現誘導法を開発し、その白血病再発予防効果を急性骨髄性白血病 (AML) 治療モデルマウスにて検証を行い、本研究の知見をもとに新たな白血病治療法の開発に向けた分子基盤の確立を目指したいと考えている。まずGeminin発現操作法として作製した膜透過型リコンビナントGemininタンパク質のCP-Gemininのマーカー特異的細胞導入法の予備実験として、ストレプトアビジンに CP-Gemininをケミカルカップリングさせ、これをビオチン化抗 Sca-1 抗体と結合させる(Sca-1-Ab-CP-Geminin複合体)。この複合体をマウスに投与し(腹腔内もしくは経静脈)、この複合体が骨髄の造血幹細胞・多能性前駆細胞分画へ集積することを、免疫染色やフローサイトメーターにて確認するとともに、 CP-Geminin の過剰発現により、造血幹細胞や前駆細胞活性が障害される至適投与経路、投与量、投与間隔を決定する。
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Research Products
(10 results)