2017 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨誘導をほどこした間葉系幹細胞集塊による新規歯周組織再生療法開発
Project/Area Number |
17H06897
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹脇 学 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (10805633)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 再生医療 / 歯周病 / 軟骨分化 / 骨分化 / 組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究室では、間葉系幹細胞(MSCs)と細胞自身が産生する細胞外基質(ECM)を用いて間葉系幹細胞集塊Clumps of MSCs/ECM complex (C-MSC)を樹立した。C-MSCは三次元的な細胞集塊であるため、人工足場材料を必要とせずに欠損部に移植可能で、ビーグル犬根分岐部III級欠損モデルにおいて効果的な歯周組織再生を促進する。しかしながら、より重篤なクリティカルモデルであるビーグル犬1壁性歯周組織欠損モデルにおいては、C-MSC、石灰化C-MSCいずれの移植も、十分な骨再生効果が得られず、軟組織である歯肉組織形成のみにとどまった。一方、軟骨誘導を経たMSCsの移植が極めて強い骨形成能を発揮することが近年明らかになりつつある。水平性大規模歯周組織欠損に対して、軟骨誘導を施されたC-MSC(軟骨分化C-MSC)の移植が軟骨内骨化の様式を経て、歯肉組織の侵入を防ぎながら効果的な骨再生を促進できると仮説をたて、移植先で軟骨内骨化を生じる軟骨分化C-MSCの誘導法を確立することおよび軟骨分化C-MSCの骨再生能および歯周組織再生能を明らかにすることを目標とした。まず、骨再生に最適な軟骨分化C-MSCの誘導条件の検討を行うこととし、軟骨分化マーカー遺伝子Sox9, Aggrecan, Type II col mRNA発現の変化をqPCRで定量し、軟骨基質の産生パターンをHE染色、サフラニンO染色、トルイジンブルー染色、およびType II colの免疫染色によって観察した。分化誘導5日のC-MSCでは、各種染色で明らかな軟骨基質の産生は見られなかったが、軟骨関連遺伝子の発現をみとめた。さらに、軟骨分化誘導を5日間行ったC-MSCをビーグル犬根分岐部III級欠損モデルに移植したところ、良好な歯周組織再生を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水平性大規模歯周組織欠損に対して、軟骨誘導を施されたC-MSC(軟骨分化C-MSC)の移植が軟骨内骨化の様式を経て、歯肉組織の侵入を防ぎながら効果的な骨再生を促進できると仮説をたて、移植先で軟骨内骨化を生じる軟骨分化C-MSCの誘導法を確立することおよび軟骨分化C-MSCの骨再生能および歯周組織再生能を明らかにすることを目標とした。まず、骨再生に最適な軟骨分化C-MSCの誘導条件の検討を行うこととし、軟骨分化マーカー遺伝子Sox9, Aggrecan, Type II col mRNA発現の変化をqPCRで定量し、軟骨基質の産生パターンをHE染色、サフラニンO染色、トルイジンブルー染色、およびType II colの免疫染色によって観察した。予備的検討として、C-MSCを軟骨誘導培地で14日間培養するとトルイジンブルーに濃染することを見出している。したがって、C-MSCを軟骨誘導培地で培養することで、経時的に成熟した軟骨基質と軟骨細胞に変化していくと期待できる。ただし、本申請書が提唱する軟骨内骨化を経る骨再生には、軟骨基質の吸収、血管の侵入、MSCから分化した骨芽細胞による骨形成が必須である。つまり、完全な軟骨の状態より、未分化なMSCを含んだ状態のほうが望ましいと考えられた。分化誘導5日のC-MSCでは、各種染色で明らかな軟骨基質の産生は見られなかったが、軟骨関連遺伝子の発現をみとめた。 さらに、軟骨分化誘導を行ったC-MSCの歯周組織再生能を確認するために、確立されただ歯周組織欠損モデルであるビーグル犬根分岐部III級欠損モデルに軟骨分化誘導を5日間行ったC-MSCおよび分化誘導をしていない培養5日目のC-MSCを移植し、歯周組織再生能を比較したところ、軟骨分化誘導を5日間行ったC-MSCは分化誘導をしていない培養5日目のC-MSCより多くの歯周組織再生を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験で得られた、高い骨形成能を発揮する軟骨分化C-MSCの歯周組織再生効果を検討するために、大規模歯周組織欠損モデルである、ビーグル犬1壁性歯周組織欠損モデルを利用する。すなわち、ビーグル犬の第1、第2、第4小臼歯を抜歯し、8週間後に抜歯窩が治癒したことを確認する。その後、第3小臼歯の近遠心それぞれに高さ4mm、幅4mmの頬舌側におよぶ1壁性の骨欠損を作製し、アルジネート印象材を填入することで炎症を惹起させる。1週間後、アルジネート印象材および不良肉芽を除去し、欠損部を郭清。上記検討で得られた培養条件でビーグル犬骨髄由来の軟骨分化C-MSCを作成し、この欠損部に移植する。4, 8, 12 週間後にその歯周組織再生効果を以下の項目で評価する。 a) マイクロCTを用いた歯槽骨再生量の定量b) HE染色による組織学的観察c) アザン染色による機能的な歯周靭帯の再生の有無の観察d) その再生過程における基質の変化について、サフラニンO染色およびType II col, Type I colの免疫染色による観察。 予備的検討として、ビーグル犬1壁性骨欠損モデルに対して申請者はC-MSCおよび骨分化C-MSCの移植を行った。その結果、分岐部III級欠損モデルに対して有効な組織再生効果を発揮した骨分化C-MSCの移植であっても、その骨再生はわずかであり、豊富な歯肉結合組織の再生にとどまった。これは、骨分化C-MSCの主な基質であるI型コラーゲンが骨形成ではなく歯肉結合組織形成に働いた可能性が高い。そこで、II型コラーゲンやプロテオグリカンをおもなECMとする軟骨分化C-MSCの移植が、歯肉結合組織の形成を防ぎながら軟骨内骨化の様式で歯槽骨再生を促すと予想される。
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