2017 Fiscal Year Annual Research Report
N型糖鎖修飾の改変による広域抗ウイルス中和抗体誘導技術の確立
Project/Area Number |
17H06907
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
駒 貴明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (00803496)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | ウイルス / HIV-1 / N型糖鎖修飾 / 広域中和抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV-1は複製過程で高頻度に変異が起こるため、HIV-1ワクチンの開発は難航している。この問題に対処するため、近年、様々なHIV-1のエンベロープタンパク質 (Env) を認識し広くウイルスを中和する広域中和抗体(bNAbs) の誘導が試みられている。しかしながら、bNAbsの特殊な性質のため、未だ有効なワクチン開発には至っていない。本申請課題では、bNAbsを強く誘導し、復帰変異を起こしにくいEnvを設計することを目的とした。 本研究課題提出後に、別のグループがCD4結合部位(CD4bs)認識bNAbsに影響するN型糖鎖修飾部位を明らかにした。そこで当初の計画を変更し、平成29年度はEnv gp41の膜貫通部位近傍(MPER) 認識bNAbsに影響を与えるN型糖鎖修飾部位を探索することにした。立体構造的にMPERに影響する可能性のあるN型糖鎖修飾部位を決定し、N型糖鎖修飾を欠損させた変異体を構築した(NL4-3を親株とする)。構築した変異体N88Q、N446Q、N461Q、N609Q、N614Q、N623Q、N635QのうちN614Qは既報通り致死的変異体であったため、これ以降の解析から除外した。逆転写酵素活性(RT)値でウイルス量を一定に揃え、MPER認識bNAbs(2F5、4E8、10E8)に対する感受性試験を行なった。その結果、N88Q、N609Q、N623Q変異体の感受性が親株NL4-3のものと比べてわずかに向上していた。従ってgp120に位置するN88、gp41に位置するN609とN623のN型糖鎖修飾がMPER認識bNAbsの結合を阻害している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
bNAbsに関する研究はこの数年で非常な勢いで進展し、N型糖鎖修飾との関係も報告され始めた。しかしながら、MPER認識bNAbsがN型糖鎖修飾の影響を受けるか否かは明らかにはなっていない。上述の通り、計画の変更はあったが、N型糖鎖修飾部位を欠損した7つの変異体を構築し、MPER認識bNAbsの結合を阻害している可能性のあるN型糖鎖修飾部位(N88、N609、N623)を絞り込んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
ここまでの実験ではLab-adapted strainであるNL4-3株を使用したが、NL4-3は中和抵抗性の低いTier 1ウイルス群に分類させる。今後、臨床分離株由来で、より中和抵抗性のあるTier2或いはTier3ウイルス群のEnvを持つN型糖鎖修飾欠損変異体を使用する。中和抵抗性株においてもNL4-3のN88、N609、N623に対応するN型糖鎖修飾部位を各々、また同時に3つ欠損させた変異体を構築しMPER認識bNAbsへの感受性を検討する。 次に、MPER認識bNAbsから逃れるためのN型糖鎖修飾の重要性を知るために、MPER認識bNAbs存在下でN型糖鎖修飾欠損体を馴化し、N型糖鎖修飾が復帰変異するか否かを検討する。復帰変異が認められた場合には、三つ組アミノ酸配列 (N-X-S/T) のうち、NとS/Tの2つのアミノ酸を同時に置換することによって、N型糖鎖修飾部位を欠損させる。その変異体を再度、bNAbs存在下で馴化し、復帰変異体が出現するのか、またその確率を明らかにする。 MPER認識bNAbsに関与するN型糖鎖修飾を複数同時に欠損した変異体は、親株よりも中和抗体誘導能が上昇すると期待される。そこで、親株または変異体をマウスに免疫し、各々のIgG抗体誘導能と中和抗体誘導能を評価する。
|
Research Products
(8 results)