2017 Fiscal Year Annual Research Report
歯根膜幹細胞誘導因子の同定と新規歯周組織再生療法の開発
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17H06953
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
御手洗 裕美 九州大学, 大学病院, 医員 (60801660)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 歯根膜幹細胞 / 歯根膜 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
MESTを組み込んだプラスミドベクターを作製した。計画段階では、初代ヒト歯根膜細胞への遺伝子導入を検討していたが導入が困難であった。そこで、幹細胞マーカーの発現が低く、多分化能を有さないヒト歯根膜細胞株 (2-52細胞株) に遺伝子導入し、MEST導入2-52細胞(2-52/MEST)を樹立し、さらに、2-52細胞株にコントロールベクターを導入した細胞 (2-52/empty)を樹立した。これら2種の細胞における間葉系幹細胞マーカーの発現をフローサイトメトリー法で解析したところ、2-52/emptyと比較して、2-52/MESTで間葉系幹細胞マーカーの発現が上昇していることを確認した。さらに、多分化能について解析するため、これら2種の細胞において、in vitro にて分化アッセイ系(骨芽細胞誘導、 脂肪細胞誘導)を用いた検討を行った。まず、骨芽細胞誘導培地を用いて一定期間培養したところ、2-52/MESTにおいて、骨関連因子 (ALP、BSP、OCN)の発現上昇を認め、石灰化形成能の上昇を認めた。さらに脂肪細胞分化培地を用いて培養したところ、脂肪関連因子 (PPAR、LPLおよびCEBPA)の発現上昇を認めた。このことから、2-52/MESTが、幹細胞特性を獲得することを明らかにした。これら2-52/MESTと2-52/emptyの遺伝子発現量の差をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析した。その中で、発現値の変動が大きく、2-52/MESTにおいて発現が高い複数の因子をピックアップした。現在、その着目した因子のsiRNAをヒト歯根膜幹細胞株である2-23細胞株へ導入してその因子の発現を抑制し、2-23細胞株における幹細胞マーカーの発現および多分化能の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-52/MESTと2-52/emptyの樹立に成功し、またこれらの遺伝子発現量の差をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析し、発現値の変動が大きい因子に着目することができた。 MESTによる幹細胞特性の付与に主要なシグナル因子の解明には至っていないものの、着目した複数の因子のsiRNAを、ヒト歯根膜幹細胞株である2-23に導入し、幹細胞マーカーの発現と、多分化能について解析を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
MESTによる幹細胞特性の付与に主要なシグナル因子の解明を継続する。また、昨年度樹立した2-52/MESTならびに2-52/emptyを用いて以下の実験(1)(2)を行っていく。 (1)in vivoにおいて、MEST導入ヒト歯根膜細胞が、歯根膜様組織形成能に及ぼす影響について検討するため、免疫不全マウスを用いた背部皮下移植モデルに、GFPを導入した(a)2-52/MESTと(b)2-52/emptyを足場材とともにそれぞれ移植する。手術から4週後に潅流固定を行い、移植を行った部位の切片を作製して組織学的に検証する。 (2)MEST導入ヒト歯根膜細胞の培養上清中に含まれるエクソソームが、歯周組織再生に及ぼす影響を検討するため、まず2-52/MESTおよび2-52/emptyの細胞培養上清からエクソソーム (2-52/MESTのエクソソーム:MEST Exo、2-52/emptyのエクソソーム:empty Exo) を単離する。in vitroにおいて、ヒト歯根膜細胞の線維芽細胞分化の促進に及ぼす影響を検討するため、MEST Exoおよびempty Exoをヒト歯根膜細胞の培養培地にそれぞれ添加し、歯根膜関連因子の発現について比較検討する。また、培養上清中に分泌される可溶性コラーゲン量を解析する。 2-52/MESTおよびMEST Exoがin vivoにおける歯根膜組織再生に及ぼす影響について検討するため、免疫不全ラットの歯周組織傷害モデルを樹立し、傷害部位にGFPを導入した(a)2-52/MEST、(b)2-52/empty、(c)MEST Exoおよび(d)empty Exoを足場材とともにそれぞれ移植する。手術から4週後に灌流固定を行い、移植部位を含めた下顎骨を摘出する。マイクロCT撮影にて組織再生を確認する。また、移植を行った部位の切片を作製して組織学的に検証する。
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