2017 Fiscal Year Annual Research Report
肝星細胞の形質転換復帰を標的とするNASH治療を指向した細胞内シグナル伝達研究
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17H07000
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
山口 桃生 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30804819)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 肝星細胞 / 肝線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満人口の増加に伴い、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の患者数が増加している。NASHの予後不良を決定づける因子は肝線維化であるが、いまだにその有効な予防・治療法はない。肝非実質細胞の一つである肝星細胞(HSC)は、肝障害時に活性化され、コラーゲンを産生・分泌する筋線維芽細胞様の形態を示す。そのため、活性型HSCは肝線維化の責任細胞と考えられている。現状、進行した肝線維化の治療は難しいとされるが、静止型HSCがコラーゲンなどの細胞外基質を分解するmatrix metalloproteinase(MMP)を分泌することから、活性型HSCを静止型HSCへと脱活性化できれば、肝線維化も治療可能であると考えられる。我々は最近、caffeineにより活性型HSCが静止型HSC様の形態を示すという大変興味深い結果を得た。また本研究初年度には、caffeineにより活性型HSCは活性型の指標であるcollagen 1A1やα-smooth muscle actinのタンパク質の発現が減少し、静止型の指標であるMMP-9のタンパク質の発現と活性が顕著に増加することを見出し、caffeineにより活性型HSCは静止型HSCに脱活性化する可能性を示した。さらに、caffeineによりAkt1のリン酸化が低下することを示した。しかし、caffeineの活性化抑制の際に認められたアデノシン受容体のサブタイプ非選択的阻害薬は活性型HSCを脱活性化させず、Akt1のリン酸化にも影響を及ぼさなかった。以上の結果より、caffeineはAkt1のリン酸化を低下させることで活性型HSCを静止型HSCに脱活性化させること、またその経路にはアデノシン受容体は関与しない可能性が示された。今後も引き続き、HSC脱活性化に伴い発現や活性が低下するシグナル分子を探索し、肝線維化を回復させる治療薬の標的分子を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Caffeineによる活性型HSCの脱活性化機構に関与すると考えていたアデノシン受容体はHSC脱活性化に関与しない可能性が示された。代わりにAkt1のリン酸化量やHypoxia Inducible Factor 1α(HIF-1α)の発現に変化が認められた。当初の計画の標的分子とは異なるが、活性型HSCの脱活性化機構の解明が可能な興味深い結果が得られつつあることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Caffeineによる活性型HSCの脱活性化機構にアデノシン受容体は関与しない可能性が示されたため、caffeineによる小胞体からのCa2+遊離やホスホジエステラーゼ阻害が関与する可能性や、caffeineによる阻害が報告されているHIF-1αが関与する可能性について検討を行い、標的分子を同定する予定である。標的分子の同定後、High-fat dietで飼育させたマウスにCCl4反復投与により肝臓に炎症を起こさせる方法にて、NASHモデルマウスを作製し、標的分子のNASHの病態に及ぼす影響を解析する。
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Research Products
(5 results)