2017 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における日系新宗教の展開-天理教を事例としてー
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17H07011
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
ジン ジョンヒョン 京都府立大学, 文学部, 研究員 (80805763)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 日系新宗教 / 天理教 / 植民地朝鮮 / 韓国 / 救済 / 布教戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、まず、天理教教会本部が戦前から発行している雑誌『みちのとも』を中心に資料収集を行い、その内容を分析した。その結果、1920年代以前(以下、韓国布教初期と表記)に韓国に渡って布教を行った天理教の日本人布教師(以下、日本人布教師と表記)は、韓国語を知らない状態で渡韓した者が多数を占めることを理解することができた。 また、韓国布教初期における日本人布教師の布教方法を以下の二つのパターンに分けることができた。すなわち、①言葉が通じなくても日本語で布教する方法、②日本語ができる韓国人の通訳を媒介とした布教方法がそれである。さらに、両方でみられる傾向として、韓国人の生活空間に入り、ともに生活しながら布教しようとしたことを指摘することができる。これは、日本人布教師が言葉を媒介とする布教を目指しながらも、一方では共同生活にもとづく宗教実践を通じて布教することを試みたことを意味する。こうした布教方法の分析より、宗教実践をとおして日本人布教師と韓国人が親しくなったという利点があったが、文字や言葉を用いた教義の伝達ができなかったことは韓国人の天理教への入信を妨げる要因の一つであったことが読み取れた。 1920年代からは、天理教教会本部が海外布教を主導するようになり、布教先の言語を学んで布教に出る者が増加した。このことは、1920年代を基準に、天理教の韓国布教の性格が変わったことを意味し、個別の布教師の布教方法に少なからぬ影響を与えたことが見て取れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究を通じて、韓国布教初期における日本人布教師の布教方法を把握することができたが、1920年代から韓国語と韓国文化を学んで布教を行った日本人布教師の特徴を分析し、両者を比較することはまだできていない。また、天理教の教えによると、聖地巡礼を介して救済が行われるとされるが、聖地巡礼が難しい状況において天理教の韓国人信者が救済をどのように意味づけたのかについて更なる調査が必要である。 以上の内容を総合的に分析し、植民地朝鮮にみられる天理教信仰者における救済の意義を明らかにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、天理教教会本部が刊行した機関誌・機関新聞を中心に、天理教の韓国布教の様態を分析した。こうした研究方法にみられる限界の一つとして、資料に反映された教団側の意図を超える考察が難しいということを指摘することができる。 2018年度からは、これまでの研究成果を参考にしながら、戦前の韓国で布教を行った日本人布教師の子孫を対象に調査を行う予定である。具体的には、戦前の韓国で布教を行った日本人布教師が残した手記、日記、写真などの記録を収集すると同時に、彼らが子孫に言い伝えた内容を聴取して分析したい。 最終的には上記の研究内容をまとめ、学会発表・論文投稿の形で発信するとともに、研究者から批判を仰ぐことによって研究の妥当性や方向性を見直していきたい。
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