2017 Fiscal Year Annual Research Report
The logical basis that support archiving of victim's narratives
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17H07029
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
山口 真紀 神戸学院大学, 全学教育推進機構, 講師 (90802695)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 被害の語り / アーカイビング / 証言集 / 傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「傷つきを語る」営みを要請する社会の側の論理について検討を進めるものである。具体的には、被害の語りのアーカイビング(収集・保存・呈示)という新しい実践について、これを支える論理を「誰にとって、なぜ良いのか(あるいは良くないのか)」という視角から検討し、アーカイビングを正当化する社会的な力の作動を明らかにする。本年度は、まず研究環境整備のため備品等を整え、本主題にかかわる基礎的・専門的文献の収集を行った。そのうえで、主として「証言集」を対象に考察を行った。題材として取り上げたのは、作家・村上春樹の『アンダーグラウンド』(1997年、講談社)である。1995年3月に発生した地下鉄サリン事件の被害者62人へのインタビュー録『アンダーグラウンド』は、現在さまざまなかたちで生起している被害の語りのアーカイビングの実践の先駆的試みである。本著の編纂企図を確認し、成果を「当時まだ取り組まれていなかった被害者の行動記録集の提示」「出来事の立体交差の場面としての表象」に認め、狙いを「読者の想像力の喚起」として整理した上で、本著の試みを「語りの道具化」という手法的な側面および「想像することの痛み」という当事者受容の視点から批判した。この成果について論文にまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年時に計画していた「証言集」の分析を行い、成果を発表したため。本年度に実施予定であった東日本大震災に関する実地調査は叶わず次年度に繰り越しとした。ただし、具体的な実践の調査は次年度から本格的に着手する予定であったため、研究遂行に問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、収集と呈示についての具体的な実践の調査に着手する。
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Research Products
(1 results)