2017 Fiscal Year Annual Research Report
芸術と倫理-政治の分節化をめぐる20世紀フランス思想の再考―サルトル研究を起点に
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17H07061
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
根木 昭英 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (00802034)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | サルトル / 芸術と倫理(モラル) / 芸術と政治 / 神学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サルトルにおける美学-倫理-政治体系の形成と意義を思想史的観点から解明し、芸術・倫理・政治の関係をめぐる20世紀フランス思想(とりわけ1940-70年代)の理解に新視座を提供することである。 本年度にはまず、サルトルの高等師範学校時代(1924-28)の未発表図書貸出記録をパリ高等師範学校図書館にて写真複写し、判読してゆく作業に取り組んだ。これにより、とりわけ初期思想形成期におけるサルトルの具体的な参照文献が明らかとなり、その成果を踏まえつつ、サルトルの美学-倫理-政治体系形成に関する以下の研究を進めることができた。 【A. 審美的な実存様態をめぐる思索に関する思想史的研究】芸術創造の前提となる審美的な実存様態についての思索形成にあたり、とりわけ美と目的性をめぐるカントの議論(『判断力批判』)が換骨奪胎されているとの見通しのもと、サルトルが参照した当時の二次資料(Basch, Barni等)の読解を進めた。 【B.「神」概念をめぐる系譜的研究】サルトルにおける二つの神概念(「自己原因」「即かつ対自」)について、上記図書貸出記録に記載のある文献(なかでもデカルトとスピノザに関連する当時の二次文献(Leveque, Delbos等))との対照を行うことで、「自己原因=神」概念の形成が「即かつ対自=神」概念の形成に先立っている点、またそこから、サルトルの神概念の持つ人間主義的特徴が説明されることを明らかにした。 【C. 文学言語の位相をめぐる思索の系譜的研究】サルトルにおける文学言語の両義的位置づけ(記号=意味作用/イマージュ=物質性)が、その淵源をフッサール現象学の受容に持っていることを踏まえ、サルトルの参照が確認できるフッサールの五著作、とりわけ、これまでの研究蓄積の少ない『内的時間意識』、『形式論理学と超越論的論理学』、『デカルト的省察』について精読作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究課題のうち、[A]「審美的な実存様態」をめぐる思想形成の思想史的研究、[B]「神」概念をめぐる思想史的研究、[C]文学言語の両義的位置づけに関する思想史的研究を課題として予定していた。[B]については、サルトルの「神」概念が持つ人間主義的特徴をテクスト的に確証することができたほか、[A][C]についても、未公開資料等を活用しつつ調査を進めることができたため、作業は予定通り進展したと言える。得られた成果については、来年度中に論文にて公にする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年次には、研究課題のうち「作品創造」、「倫理(モラル)」のテーマに関連する諸課題を予定通り実施する。また二年間の研究で得られたそれぞれの成果を、研究の起点であったサルトルの美学-倫理-政治体系の論理秩序に合わせて再統合し、発表可能な一つの成果とする。
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