2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Theory and Praxis of the "New Language" in German Post-War Literature
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17H07076
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
風岡 祐貴 北里大学, 一般教育部, 講師 (20801989)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ・オーストリアの戦後文学 / インゲボルク・バッハマン / 遺稿 / 詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の実績報告書の9「今後の研究の推進方策」で述べた通り、本年度も引き続きインゲボルク・バッハマンの遺稿の分析を進めた。まずはドイツでの研究発表(2018年3月)で得た指摘を踏まえて、遺稿番号344に関する考察を深め、論文として投稿した。また遺稿番号2454、167、311、311aについての解釈も論文にまとめている。論文を執筆するうえで大きく役に立ったのは、2018年3月と2019年3月に行ったオーストリアでの研究滞在である。とりわけ現地の研究者との議論を通じて、自らの分析をより批判的に見直すことができた。たとえばバッハマンの遺稿には皮肉と考えられる箇所があるのかどうか、または遺稿に用いられた聖書の引用の問題について示唆を得た。研究を遂行する過程で、昨年度試みた遺稿の分析で不十分な点を洗い出し、今年度はより質の高い成果を出すことを目指した。そして今年度は研究対象を遺稿番号355と5230、5233に絞り読解を行った。1962年以降に書かれた遺稿詩でバッハマンが書き綴ったことは、主に嘆きや痛みの描写である。具体的にいえば、遺稿の中で語り手は、失恋による喪失や苦痛をテーマにしている。しかし注目すべきは、語り手が単に苦痛の経験を描くだけでなく、言葉とは何かという問題を取り上げ、自らが用いる言葉に批判的になっている点である。つまり苦痛だけでなく、苦痛を描くための言葉に対して内省的になっているといえる。先行研究においてバッハマンの遺稿詩はしばしば伝記的文脈から読み解かれることが多いが、以上のことから決して伝記的事実に還元されるものではなく、戦後文学の作家が問題にした「新しい言葉」と密接に繋がっている。 またバッハマンの遺稿詩の解釈と並行して、昨年度と同じく、国内のドイツ・ユダヤ研究会に参加した。そしてバッハマンの詩に決定的な影響を与えたパウル・ツェランの詩について二回発表を行った。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Remarks |
「研究実績の概要」で述べたようにドイツ・ユダヤ研究会(於明治大学)において2018年4月にパウル・ツェランの詩Das umhergestosseneについて、2018年6月に同研究会でツェランの詩Koenigswutについて発表を行った。
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Research Products
(1 results)