2018 Fiscal Year Annual Research Report
Between roman and critic - Proust and the critic of nineteenth century
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17H07111
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
池田 潤 白百合女子大学, 文学部, 講師 (90800938)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | プルースト / 失われた時を求めて / サント=ブーヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』について、この作品が「批評的小説」であるという側面に注目し研究を行なった。 2018年度は、篠田勝英・海老根龍介・辻川慶子編『引用の文学史』の共著者として分担執筆を行い、「『失われた時を求めて』は『サント=ブーヴに反論する』の小説版なのか」という章を執筆した。この論文では、『失われた時を求めて』の中でも典型的に『サント=ブーヴに反論する』の痕跡が濃い箇所をとりあげて、プルーストの小説と批評、さらに批判対象となっているサント=ブーヴの3種類のテクストを突き合わせ、『失われた時を求めて』の特質を浮き彫りにした。その特質とは、ひとことでいうならば、あくまでこの作品は小説であるということであり、『サント=ブーヴに反論する』の論旨が直線的であるのに対し、小説テクストは、たしかにそれを下敷きにしていながらも、「作者の主張」のようなものが一意的に特定できるようにはなっていないということである。むしろプルーストが意図的に表現を重層化させているということは草稿調査の結果からも明らかで、この重層化の過程に批評から小説への形式的移行のひとつの本質を見ることが許されるはずである。 このように、今年度の研究によって、『失われた時を求めて』が「批評的小説」であるというとき、それは「小説的批評」とは異なるということが明らかになった。ここからさらに導かれる仮説は、『失われた時を求めて』は『サント=ブーヴに反論する』の乗り越え、自己超越なのではないかということであり、その視点からプルーストとサント=ブーヴの関係を捉え直すことも有意義であろうと思われるので、今後の研究課題としたい。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)
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[Book] 引用の文学史2019
Author(s)
篠田勝英、海老根龍介、辻川慶子
Total Pages
384
Publisher
水声社
ISBN
480100394X