2018 Fiscal Year Annual Research Report
Genetical and historical analysis of Verne's reception in Proust. Literature, art and progressivism
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17H07228
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
荒原 邦博 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20806509)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 仏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
『失われた時を求めて』はSF冒険小説家ヴェルヌの《驚異の旅》連作といかなる関連があるのか。プルーストの長篇は純文学に属するがゆえ、大衆作家ヴェルヌとの関係は双方の作家研究で長らく等閑に付されてきた。そこで平成30年度の研究では、ヴェルヌの幻想小説『カルパチアの城』を生成論的・テクスト理論的な分析対象とし、美術作品への参照と進歩主義への批判によってこの作品が特徴づけられることから、広範な文化史的読解を施すことでプルーストとヴェルヌとの関係性を十全に把握し、両者を分断してきた文学史に見直しを迫ることを目的とした。 具体的には、『カルパチアの城』と関連する『失われた時を求めて』のテクストを検討するために、第2篇『花咲く乙女たちの蔭に』の一節に関する検討を行い、1860年代のマネおよび1884年のマネ回顧展以降の受容に関する美術批評を主にBNF(フランス国立図書館)所蔵の資料を精査することによって、また同時代のアカデミスム絵画と彫刻、古代ギリシアのプラクシテレスの彫像についてオルセーやルーヴル美術館で検討することによって、ヴェルヌとプルーストに見られるマネとアカデミスムをめぐる言表の歴史的な意味作用の射程を解明することができた。 上記の資料収集および現地調査から得られた結果を踏まえて、東京外国語大学総合文化研究所でマネをめぐる古典性と前衛主義への批判に関する口頭発表を行い、概要を紀要に掲載した。また『カルパチアの城』の歌姫ラ・スティラの肖像画の作者がジャン=レオン・ジェロームであることをヴェルヌ研究史上初めて特定し、この肖像画を鏡と電気照明を使って投影する小説内の近未来的装置の持つ意味作用を明らかにした。万国博覧会における大衆の進歩礼賛とアカデミスム趣味とは一線を画し、この装置がジェロームとマネの闘争機械となっていることを解明した画期的なこの研究は、ヴェルヌ研究会会誌に掲載された。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)