2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a fast separation and purification method of helium from gas samples for helium isotope analyses
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17H07408
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
小林 真大 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部環境技術グループ, 研究員 (80806018)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 希ガス / 質量分析 / 分子ふるい / セラミック |
Outline of Annual Research Achievements |
火山ガスや地下水のヘリウム同位体比は、地下のマグマの活動や断層運動の活動度を評価するためのトレーサーとしての利用が期待されている。それらの活動度の評価には、可能な限り短い間隔でヘリウム同位体比の測定を行い、その変動を観測する必要がある。しかしながら、現在の分析法では、採取した試料を実験室に持ち帰り、大型の質量分析計を用いた長時間の測定を要することから、数ヶ月~数年間隔での観測が主である。分析時間の多くは、気体試料からのヘリウムの分離と精製に費やされており、大幅な簡略化が求められている。そこで、本研究では迅速なヘリウムの分離、精製のため、小さな気体分子を選択的に透過する多孔質セラミック膜を作製し、質量分析計への試料導入系に適用した手法を開発することを試みる。 今年度は主に、多孔質セラミック膜の作製条件の検討、ピラニー真空計を用いた簡易的な気体透過率測定系の構築および作製した膜の評価を行った。多孔質セラミック膜は、多孔質アルミナを支持体とし、ゾル-ゲル法を用いて作製した。研究計画時は、ベーマイトゾルをコーティングして作成するγ-アルミナを中間層とすることを検討していたが、試薬の取り扱いの容易さからメソポーラスシリカを中間層とした。分離相には、シリカゾルをコーティングしより細孔径の小さい多孔質シリカを用いた。簡易的な気体透過率測定系は、独自に設計し構築を行った。また、東京大学大学院総合文化研究科・角野研究室の四重極型質量分析計を用いた評価も行った。作製した分離膜は分離能が十分でなく、窒素や二酸化炭素のような分子径の大きなものも透過してしまうが、人工的に混合した希ガスと四重極型質量分析計を用いた測定から、分子径の小さい気体がより効率高く透過していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多孔質セラミック膜の孔径は、ゾル溶液の組成、反応時間及び温度、コーティング法、焼結時間および温度等の多くのパラメータに依存する。多孔質セラミック膜の作製については、これまでに多くの報告がされているが、その作製法について文献中で不明瞭な点が少なくない。そのため、それらの細かい条件については、試行錯誤を繰り返して検討する必要があった。その過程に時間を多く要したため、現在のところ十分な分離能をもつ分離膜の作製を達成できておらず、進捗が遅れている。しかしながら、簡易的な測定系の構築および試料導入系の設計・開発等の、分析系に関する項目については計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製した分離膜は、分子系の小さい気体を選択的に透過するものの、その分離能は十分ではなかった。今年度は主にゾル溶液の組成について検討したが、今後はコーティング法およびゾル溶液の反応時間・温度、焼結時間・温度についての検討を行い、十分な分離能をもつ分離膜の作製を行う。また、ヘリウム同位体比分析の妨害となる水素を取り除くための機構も新たに導入する。水素の除去は、水素を急増可能なTiやZrを用いることを計画している。作製した分離膜は、東京大学大学院総合文化研究科・角野研究室の四重極型質量分析計および希ガス専用質量分析計を用いて、気体の透過率の測定および透過時のヘリウム同位体間の分別度合いの評価を行う。測定には、大気やヘリウムガス等の精製ガス、水素を添加したガス、3Heと4He、その他希ガスを人工的に混合させたガスを用いる。いずれの段階でも、得られた結果をフィードバックさせつつ、分離膜の作製法および分析系の改良を行う。特に、可搬型の質量分析計に組み込みオンサイトでのヘリウム同位体比分析を行うことを目的とするので、試料導入系に用いる部品の小型化を行う。最終的には目的とする可搬型の質量分析計に組み込み、実際のフィールドでヘリウム同位体比の測定を行う。
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