2017 Fiscal Year Annual Research Report
Improvement of Reliability of Welded Joint by Laser Peening - Rendering a Surface Defect Harmless -
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17J00191
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
笛木 隆太郎 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 金属疲労 / 溶接部 / ピーニング / 残留応力 / 破壊力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶接部では,溶接の熱影響による引張残留応力や溶接余盛の形成によって生じる応力集中により,疲労き裂等の表面欠陥が発生しやすく,構造物等における破壊事故の主要な発生原因のひとつとなっている。そのため,非破壊検査を実施し,欠陥の有無を確認することで溶接部の信頼性を検証している。しかし,非破壊検査には検出限界が存在し,それ以下の寸法の欠陥を検出することはできない。そこで,本研究では,溶接部にピーニングと呼ばれる表面処理を施工し,材料表面部に圧縮残留応力を導入することで,表面欠陥が疲労強度に及ぼす影響を無害化して溶接部の信頼性向上を図る構想を提案した。ピーニングには様々な方法が存在するが,本研究ではできる限り大きな表面欠陥を無害化することを目標とし,材料の表面から深い位置まで圧縮残留応力を導入可能なレーザピーニング(LP)に着目し,LP施工により無害化可能な欠陥寸法について調査した。本年度の研究実績の概要を以下に述べる。 (1) 引張強さ600 MPa級のステンレス鋼について,LPの最適施工条件を決定した。溶接試験片に最適施工条件でLPを施工し,溶接止端部近傍に種々の寸法の人工表面欠陥を導入した後,疲労試験を実施し,無害化可能な欠陥寸法を調査した。また,圧縮残留応力を導入可能な深さがLPよりも浅いショットピーニング(SP)についても同様の調査を実施し,結果を比較することで,ピーニング方法の違いによる残留応力分布の違いが無害化可能な欠陥寸法に及ぼす影響を調査した。さらに,欠陥寸法と疲労限度の定量的関係を破壊力学的に評価する方法を提案し,評価結果の妥当性について検証した。 (2) 引張強さ800 MPa級の高張力鋼について,上記(1)と同様のプロセスでLPの最適施工条件を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1) 引張強さ600 MPa級のステンレス鋼ならびに(2) 引張強さ800 MPa級の高張力鋼について研究を実施した。それぞれの進捗状況は以下の通りである。 (1) 引張強さ600 MPa級のステンレス鋼について,試験片に複数の施工条件にてLPを施工し,それぞれ残留応力分布を調査した。残留応力分布をもとに応力拡大係数を評価し,疲労き裂進展に対する抑制効果が最も高い施工条件を最適施工条件と決定した。溶接試験片には溶接の熱影響によって表面部に引張残留応力が生じていたが,その大小に関わらず,最適施工条件でLP施工することで表面部の引張残留応力を降伏応力程度の圧縮残留応力に変化させることが可能であることがわかった。溶接試験片に最適施工条件でLPを施工した後,溶接止端部近傍に種々の寸法の人工表面欠陥を導入した。その後,疲労試験を実施し,疲労限度および破壊起点から無害化可能な欠陥寸法を決定した。SPについても同様の疲労試験を実施した.実験結果を比較することで,ピーニング方法の違いが無害化可能な欠陥寸法に及ぼす影響を調査した。さらに,疲労限度における作用応力分布と残留応力分布を重ね合わせた正味の応力拡大係数範囲と,材料固有の下限界応力拡大係数範囲の大小関係を比較することで,欠陥寸法と疲労限度の定量的関係を評価する方法を提案した。評価結果は実験結果とよく整合しており,評価法が妥当であることを確認できた。 (2) 引張強さ800 MPa級の高張力鋼の溶接試験片を作製し,上記(1)と同様のプロセスで高張力鋼に対するLPの最適施工条件を決定した。LPと比較するため,ニードルピーニング(NP)についても最適施工条件を調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
引張強さ800 MPa級の高張力鋼の溶接試験片にLPを最適条件で施工し,種々の寸法の人工表面欠陥を導入した後,疲労試験を実施して無害化可能な欠陥寸法を実験的に明らかにする。NPについても同様に実験を実施し,結果を比較することで,高張力鋼溶接部に対するLP施工が欠陥の無害化に及ぼす影響を相対的に検討する。さらに,本年度提案した評価法を用いて欠陥寸法と疲労限度の定量的関係を評価し,高張力鋼溶接部についても精度の良い評価が可能かどうかを検証する。
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Research Products
(3 results)