2017 Fiscal Year Annual Research Report
外部熱源が不要な革新的バイオ炭製造技術の開発:自己発熱反応によるバイオ炭製造
Project/Area Number |
17J00272
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 貴則 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 廃棄物系バイオマス / バイオ固形燃料 / 低温酸化 / 半炭化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高水分で取り扱いづらい廃棄物系バイオマスを,持続的かつ省エネルギーな方法でバイオ固形燃料(バイオ炭)へと変換し,廃棄物系バイオマスの資源化,エネルギー化に資することを目的としている。具体的には100 ℃以下で進行する低温酸化反応(LTO)により湿潤バイオマスの乾燥と分解を進め,バイオマスの安定化ならびに質向上を目指している。本年度は以下の項目について検討した。 (1)LTOによるバイオマス分解機構の解明:水分調整した乳牛ふんを有酸素雰囲気のもと90 ℃で加熱したところ,バイオマスの酸化的分解が確認された。分解プロセスでは二酸化炭素,水,酢酸が主な分解物として検出された。ここで検出された成分は熱分解反応を主反応とする半炭化においても放出されることが知られている。つまり,100 ℃以下という低い温度域であってもバイオマスは半炭化と似た分解プロセスを経ることが示唆された。 (2)初期含水率と加熱温度がLTOに及ぼす影響:乳牛ふんのようなスラリー状態のバイオマスでは含水率が80%wbを超えることもあり,材料と酸素の接触が阻害されLTOが進まないことが懸念される。また,安定したバイオマス分解を進めるのに必要な加熱温度を把握しておく必要もある。それぞれの変数の操作範囲について検討したところ,初期含水率に関しては40-80%wbの範囲内であれば,加熱温度に関しては少なくとも80 ℃以上であれば確実にLTOによるバイオマスの安定化が達成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は100 ℃以下でもバイオマスの分解を引き起こす低温酸化プロセスに着目し,それによるバイオマス分解のメカニズムの解明に着手した。その後,低温酸化プロセスが適用可能な操作条件を明らかにするため加熱温度やバイオマスの初期含水率について検討した。その成果として,低温酸化プロセスにおいてもバイオマスは従来の半炭化や炭化と似た分解を受けることを見出したことや,高水分材料においても十分適用な方法論であること,そして少なくとも80 ℃以上の温度であればバイオマス分解が安定して進むことを明らかにした。 このような状況から,100 ℃よりも遥かに低い80 ℃での炭化の可能性を見出したことは,期待以上の研究の進展があったと判断するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は元素分析ならびに発熱量分析を重点的に進めることで,提案手法で作成されたバイオ炭の品質を明らかにする。これと従来の半炭化法で作成されたバイオ炭の品質を比較しつつ,提案手法の実現可能性について議論を展開する予定である。
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