2017 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの回避行動に焦点化した学校での不安・抑うつ・怒りの診断横断的介入の検討
Project/Area Number |
17J00307
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岸田 広平 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 診断横断的介入 / 児童青年 / 不安症 / 抑うつ障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は子どもの回避行動に焦点化した診断横断的介入を実施することであった。本年度は基礎研究(研究1、研究2)および臨床研究(研究3)を実施した。基礎研究は2つの研究から構成され、児童における回避行動機能が抑うつ症状と不安症状に与える影響を検討することを目的とした。まず研究1では、児童青年期の回避行動の頻度を測定することのできる子ども用回避行動尺度(Childre's Avoidance Behavior Scale:CABS)を開発し、信頼性と妥当性の検討を行った。児童129名に対する分析の結果、CABS は十分な妥当性と部分的な信頼性をもつ尺度であることが確認された。続いて研究2では、CABS を用いて、児童における回避行動が不安症状と抑うつ症状に与える影響を検討した。児童137名を対象にした階層的重回帰分析の結果、不安症状と抑うつ症状のいずれについても、一方の症状の影響を統制した上で、回避行動の頻度から有意な正の回帰係数が確認された。次に、臨床研究(研究3)では、児童青年の不安症と抑うつ障害に対するエクスポージャーに基づく診断横断的介入の有効性に関する予備的検討を行うことを目的とした。プログラムの参加者は、不安症または抑うつ障害を抱える児童青年8名であり、全ての参加者がプログラムを完遂した。介入の結果、臨床家評定による主診断の重症度と診断の数、自己評定の不安症状と抑うつ症状、親評定の不安症、自己評定の強みと困難における情緒に対する有効性が確認され、本プログラムの有効性が示唆された。以上のように本年度は、児童青年の回避行動に関する基礎研究と臨床研究を主に実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究計画の基礎研究および臨床研究についてデータの収集、分析、論文の執筆を予定通り進めている。基礎研究については、現在、順調にデータの収集を行っている。臨床研究においては、パイロットスタディを実施し、実際の臨床場面においてプログラムの効果を予備的に検証している。この研究については、既に論文を執筆しており、査読誌に投稿、現在審査を受けているところである。加えて、学内の紀要にも論文を別に執筆し、既に採択済みである。さらに、サンディエゴとロンドンで開催された国際発表、および、新潟、福岡、東京といった場所での国内発表を非常に精力的に行った。以上より、平成29年度における研究進捗状況はおおむね順調に進展したと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、児童青年の不安症と抑うつ障害に対する診断横断的介入の有効性を、無作為化比較試験を用いて検討する予定である。研究の実施方法を下記に示す。同志社大学心理臨床センターにて対象者の募集を行う。本プログラムに参加を希望したものの中から、本研究の設定する包含基準に当てはまる児童青年を対象にして、プログラムを実施する。本研究ではプログラムの有効性を検討するために、介入前、介入後、3か月後、にそれぞれアセスメントを行う。なお、本研究ではプログラムの効果を検証するために、プログラムの参加基準に合致し、かつ、プログラム参加の了承が得られた参加者を、介入群と比較対象群に無作為に割り付ける。比較対象群については、2か月後、改めてアセスメントを実施した後、プログラムを実施し、介入前後と3か月後にアセスメントを実施する。プログラムは指導教員の指導の下、事前に用意された資料を用いて実施する。アセスメントは、子どもの自己評定尺度、親評定尺度、半構造化面接を用いて測定を行う。以上により、児童青年の不安症と抑うつ障害に対する診断横断的介入の有効性を無作為化比較試験によって明らかにする予定である。
|