2017 Fiscal Year Annual Research Report
反芻のスクリーニングツール作成と軽減方略の検討―反芻に困窮する当事者の体験から―
Project/Area Number |
17J00311
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝又 結菜 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 反芻 / 反芻体験 / 心理尺度 / 心理アセスメント / 臨床心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、反芻に困っている反芻困窮者の実際の反芻体験について、3つの研究を実施した。研究1では、反芻スクリーニングツール作成の基礎的な位置付けとなる反芻体験評価スケールを作成し、インターネット調査を用いて大規模サンプルにおける反芻体験を探索的に調査した。さらに、反芻体験評価スケールと精神的健康指標との関連を検討した。結果、反芻の持続時間、反芻の頻度、反芻への困窮度は、既存の反芻尺度、抑うつ、不安と正の相関を、主観的幸福感と負の相関を示した。反芻体験指標の得点は、人数の分布とはほぼ比例関係にあり、精神的健康に負の影響を示したことからも、反芻の重症度をアセスメントするツールとして役立つ可能性が示唆された。本研究は所属機関の紀要論文に投稿され、採択された。研究2では、反芻特性を持つ人がどのように反芻を体験するかについて、既存の反芻特性尺度と反芻体験評価スケールを用いて検討した。結果、否定的考え込みは、長時間・高頻度の反芻体験全般に関連が見られた。反芻的自己注目は、日常でよく感じる安定的な自己注目のしやすさと関連が見られた。ネガティブな反芻傾向は、反芻体験の時間や止め難さと関連が見られた。ネガティブな反芻のコントロール不可能性は、反芻に対する認知の硬さと関連が見られた。さらに、媒介分析を行ったところ、反芻特性は直接または反すうに対するネガティブな信念を媒介して反芻重症度に影響することが示唆された。本研究は、現在査読付きの国内誌に投稿中である。研究3では、反芻に困っている当事者の反芻体験プロセスを明らかにするため、反芻困窮者と反芻非困窮者に対し、インタビュー調査を実施した。現在は質的な手法を用いてデータの分析を行っており、今後は学会での発表や論文雑誌への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では、質問紙調査とインタビュー調査を実施した。質問紙調査は、研究計画を立て倫理審査を経てからすぐに実施され、分析を行い、論文化が進んだ。一方、インタビュー調査は、調査の対象となる反芻困窮者について、安全なインタビューを実施するための倫理的配慮から、精神的健康度や精神科等への通院についてスクリーニングを行ったところ、該当するサンプルが非常に少なくなった。結果、妥当なサンプルサイズの調査協力者収集には約半年を要し、インタビューも協力者募集と並行して4ヶ月間に渡って行われた。このため、インタビューデータは現在分析中であり、やや遅れているという評価が妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3つの課題を進める予定である。課題1:反芻困窮者の反芻体験プロセスに関する質的研究(H29年度から継続)。課題2:反芻困窮者の反芻体験プロセスモデルの量的検証。課題3:反芻困窮者の反芻体験時の脳波測定。 課題1では、前年度中に収集された反芻困窮者と反芻非困窮者のインタビューデータを質的に分析し、反芻困窮者の反芻体験プロセスに関する仮設モデルを生成することを目的とする。分析の結果はまとめて学会に発表し、意見をいただいてさらにモデルを精緻化する。また、課題1で生成された仮説モデルがより広いサンプルにおいて当てはまるか検討するために、課題2では、仮説モデルを基礎として反芻体験プロセスを量的に検討できるよう研究デザインを組み、質問紙法によって課題1の仮説モデルを検証することを目的とする。結果は論文化し、査読付きの国内雑誌へ投稿する。課題3では、前年度の研究や課題1の反芻体験プロセス仮説モデルをもとに、反芻体験誘導課題を作成し、反芻体験中の脳波を測定する。対象者は、課題1と同様、反芻困窮者と反芻非困窮者とし、両者の比較により、反芻に特徴的な脳波を抽出することを目的とする。当初は反芻のスクリーニングツールとして心理尺度を想定していたが、反芻体験時の脳活動を検討することにより、脳波をバイオマーカーとしてより客観的なスクリーニングが可能となることを目指す。
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Research Products
(4 results)