2017 Fiscal Year Annual Research Report
権威主義体制下における福祉縮減と政治指導者のアウトソーシング戦略
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17J00335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河村 有介 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 権威主義体制 / 社会保障 / 福祉縮減 / 社会基金 / 慈善事業 / 中東・北アフリカ / エジプト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、権威主義体制下の政治指導者のアウトソーシング戦略に関する理論枠組みの構築が挙げられる。本研究が研究対象としている二つの事例、1.イスラーム組織による慈善事業(イスラーム慈善事業)、2.世界銀行や先進国政府の資金援助による貧困層に対する政策金融事業(社会基金事業)に関する先行研究の知見を整理した。事例1は、イスラーム組織による慈善事業であるため、一般的にはイスラーム圏の諸国(とくに中東・北アフリカ諸国)が研究対象となる。しかし、本研究では、より視野を広げて、キリスト教などのイスラーム以外の宗教と福祉の関係について扱う文献も用いて、理論枠組みの構築に努めた。 また、事例2の社会基金は、中東・北アフリカ諸国だけではなく、ペルーやボリビアなどのラテンアメリカを中心にして、世界各国で設立・運営されている。そして、多くの場合、社会基金には世界銀行からの融資資金や先進国政府による国際援助資金が投入されている。本研究では、二次文献だけではなく、世界銀行や先進国政府が発行している資料を用いて、社会基金に関する知見を整理した。これによって、世界各国ではどのように社会基金が運用されているのか、そして、エジプトにおける社会基金の運用とはどのように異なるのかを明らかにした。 その上で、これら二つの事例に関して、実際にどのように運用されているのかを明らかにすることに努めた。特に、これらの事業に関する最新の動向を知るために、現地で刊行されている新聞を利用した。これらの資料を用いて、エジプト革命(2011年)以降、これらの事業にどのような変化がもたらされたのかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に提出した年次計画のスケジュールに沿い、本年度中にある程度、理論枠組みの構築を進めることができた。 研究成果の発信に関しても、おおむね順調に進展している。まず、博士論文を加筆修正し、出版することができた。次に、社会政策の機能不全と移民との関係について研究し、その成果を出版する機会にも恵まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで構築に努めてきた理論枠組みに基づいて、事例に関する理解を深める予定である。そのために、エジプトに渡航し、一次資料の収集やインタビュー調査を実施する計画である。このような作業を通じて、本研究の目的であるエジプト・ムバーラク政権下でのアウトソーシング戦略とその帰結について明らかにできると考えている。また、理論枠組みの精緻化のためには、他の研究者からのフィードバックが不可欠であるため、本研究の中間成果を学会や研究会などで積極的に公開を図っていく。
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