2017 Fiscal Year Annual Research Report
デモクラシー・都市形成過程のなかの近代天皇制―御料地処分事業の分析から
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17J00336
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 祐介 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 日本近現代史 / 日本近代史 / 近代天皇制 / 宮中 / 皇室財産 / 御料地 / 大正デモクラシー / 土地制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、当初の計画に従い、主に以下の作業を行った。 1、文書館などにおける史料調査。宮内庁宮内公文書館が所蔵する「土地整理録」、「地籍録」、「重要雑録」、「予算委員会議録」などの簿冊、国立国会図書館憲政資料室が所蔵する政治家・宮内官の私文書、小林記念林業文献センターが所蔵する史料、東京都公文書館が所蔵する東京市の公文書、小田原市立図書館が所蔵する公刊・未公刊史料、一橋大学経済研究所が所蔵する「帝室林野局統計書」(各年度)などについて、開示請求・閲覧・複写(撮影を含む)を行った。また主に国立国会図書館と一橋大学附属図書館において、同時代の雑誌・新聞記事についても収集を行った。 2、先行研究の渉猟。近代天皇制、土地制度、都市行財政史などの分野について、先行研究を渉猟し、研究史の把握に努めた。併せて、各種学会・研究会などに積極的に参加し、日本近現代史研究についての最新の知見を得ることに努めた。 3、研究成果の公表。平成29年度は論文1本、学会報告1本を発表した。論文としては、「皇室財産課税問題の展開―1890~1920年」(『歴史学研究』961号、2017年)を発表した。同論文では、「国家は皇室に課税し得るか」という問題をめぐる論争に着目しつつ、明治後期皇室制度改革によって、皇室は国家の一部であり、皇室の事務の執行を物的に担保する皇室財産も<国家の財産>であるという解釈が、法のレベルにおいて確立していったことを主に明らかにした。この論文は、本研究で対象とする時期の前史を扱ったものであり、研究の前提を固める上で少なからぬ意味がある。学会報告としては、「小田原城址地をめぐる所有・利用の関係史―宮内省・旧藩主家・小田原町・地域」(近現代史研究会例会、2018年2月)を発表した。この報告は、小田原町所在御料地の取得・処分過程における各主体の関係性を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国立国会図書館、小林記念林業文献センター、一橋大学経済研究所などにおける調査は概ね当初の計画通りに進めることができた。特に小田原市立図書館において、自治体史や地方新聞といった公刊史料のみならず、多くの未公刊史料を調査・収集することができた。その結果、当初は採用二年目前半に行う予定だった小田原町所在御料地の取得・処分過程についての報告を半年ほど前倒しして行うことができた。 また宮内庁宮内公文書館においても史料の収集・調査を進めたが、「土地整理録」と「地籍録」は冊数が膨大であることもあって、未だその全容を把握するには至っていない。次年度以降も継続的に調査に当たりたい。 一方、上記の調査と研究成果の公表に注力した結果ではあるものの、当初予定していた熱海市立図書館、香川大学附属図書館、大阪府公文書館における調査を次年度に積み残すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には申請書に記した年次計画に従って史料収集と論文執筆を進める。 平成30年度においては、宮内庁宮内公文書館において継続的に調査を行うとともに、熱海市立図書館、静岡県立中央図書館、名古屋大学附属図書館、香川大学附属図書館、大阪府公文書館、北海道立文書館などにおいて調査を行う。 また平成29年度に報告した「小田原城址地をめぐる所有・利用の関係史―宮内省・旧藩主家・小田原町・地域」については、内容をブラッシュアップした上で、所属する研究会において企画している論文集に寄稿する。また熱海町所在御料地の処分問題についても、所属する学会ないし研究会において報告を行う。それに加えて、主に平成29年度の調査において得られた成果をまとめる形で、大正後期~昭和初期における御料地処分政策の展開過程についての論文を執筆し、学術雑誌に投稿することを目指す。
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