2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J00339
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永嶋 宇 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 線虫 / 連合学習 / 飢餓 / DAF-16/FOXO / インスリン様シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの動物の生存には、周囲の環境に応じた的確な行動が重要である。線虫C.elegansは、塩濃度と飢餓を結びつけて記憶し、飢餓時の塩濃度を忌避する行動を示す。この学習機構には、インスリン様シグナル伝達および一般にその下流で働くFOXO型転写因子(DAF-16)が必要であることが知られていた。とりわけ、DAF-16依存の学習制御におけるメカニズムは不明であった。本研究では、DAF-16依存の記憶学習のメカニズムを明らかにし、記憶学習におけるインスリン様シグナル伝達の作用機序の解明を目指す。 はじめに、DAF-16を欠損した変異体について学習能を調べ、DAF-16が記憶学習に関わることを確認した。DAF-16には多数のアイソフォームが存在する。それぞれのアイソフォームを欠損した変異体を用いた解析や機能回復実験などにより、複数のアイソフォームが学習を制御しうることが示唆された。最も学習への寄与が大きいことが示唆されたアイソフォームについては機能細胞を探索し、特定の感覚神経で機能することを突き止めた。 記憶学習において、DAF-16が機能する時期についても検討した。阻害剤などを用いた実験により、少なくとも条件付け以降に働くDAF-16が学習に関わることが示唆されている。 遺伝学的解析により、DAF-16依存の経路はインスリン様経路と少なくとも部分的に独立に機能することがわかった。さらに、DAF-16依存の経路で働く機構を調べるため、DAF-16の下流因子の探索を行った。その結果、複数の下流因子の候補が得られ、現在DAF-16との関係を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝学的解析により、塩濃度/飢餓の連合学習に関わるDAF-16の機能アイソフォームと、DAF-16が機能しうる組織、細胞を特定することができた。さらに、既知の経路とDAF-16の関係を調べ、DAF-16の下流で働く経路を絞り込むことができている。DAF-16とその上流で働く経路との関係については現時点では明確に示せてはいないが、研究は概ね計画どおりに進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、DAF-16の下流因子の候補について解析を行い、DAF-16が学習を制御する分子レベルでのメカニズムの解明を目指す。また、DAF-16の上流で働く機構についても検討する。これまでに、DAF-16の上流ではインスリン様経路が働くことがよく知られていることから、インスリン様経路とDAF-16の関係を遺伝学的手法などを用いて解析する予定である。また、DAF-16が記憶学習に関与する時期を、現行の手法を改良することで絞り込む。 DAF-16が細胞レベルに与える効果についても検証する。カルシウムイメージングにより、DAF-16が機能する感覚神経の応答が、DAF-16依存で変化するかを調べる。また、神経回路レベルの解析も行い、DAF-16依存のシグナルが学習を制御する際の神経回路を解析する予定である。 これらの検証により、記憶学習におけるDAF-16の役割を、分子・細胞・回路・個体レベルで明らかにすることを目指す。
|