2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属絶縁体転移及び磁性体薄膜を用いたカシミール力の制御と斥力化に関する研究
Project/Area Number |
17J00380
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 尚樹 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | カシミール力 / 相互作用力 / 原子間力顕微鏡 / カシミール効果 / 接触電位差 / 静電気力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カシミール力の誘電率・膜厚依存性を明らかにし、ナノ電気機械システムと量子浮遊への応用に向け、カシミール力の制御と斥力化を実現することである。上記目的のため、カシミール力の誘電率・膜厚依存性の測定が求められる。 カシミール力の測定では、一般的にナノスケール及びマイクロスケールの距離において、マイクロスケールの半径を持つ球形探針を用いて実験が行われる。このような実験条件において、測定される相互作用力はカシミール力と静電気力の合力となる。このため、カシミール力の誘電率・膜厚依存性を明らかにするためには、接触電位差に起因した静電気力の解析と評価が必要となる。しかしながら、FM-AFMを用いた従来の方法では、局所電荷がある場合に接触電位差と静電気力を正しく評価できないことが分かっており、この問題を解決するために、FM-AFMに装置を追加し評価する手法が提案されている。本年度は、このような追加の装置を必要とせずに、接触電位差と静電気力を評価する手法の提案を行った。本研究では二種類の力分光の測定(周波数シフトの距離依存の測定、及び周波数シフトの電圧依存性の測定)を行い、それぞれの測定から得られた結果を比較することで静電気力の評価を行った。本手法を用いることで、カシミール力の測定において静電気力の影響を追加の装置を必要とせずに評価することができるようになった。測定ではカシミール力と静電気力の合力が得られるため、静電気力の解析と評価は重要であり、本手法で得られた知見はカシミール力の研究において広く活用できるものであると考えられる。以上が本年度に得られた成果であり、北海道胆振東部地震に伴う装置の故障の影響により予定とは異なる進捗となったが、静電気力と接触電位差に対する解析手法を提案し発表を行ったことは、カシミール力の測定における重要な知見を示すに至ったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は金属-絶縁体転移前後の低温にて探針とマグネタイト間に働くカシミール力の測定を行い、NEMSへの応用に向けてカシミール力の誘電率依存性を明らかにする予定であった。しかしながら、カシミール力の測定に用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡の故障、及び北海道胆振東部地震に伴う全域停電の影響による故障のため、計画通りに実験を進めることが困難な状況となった。このため、本年度はカシミール力の測定において問題となっている静電気力に関して研究を進めた。本年度に得られた知見を活用し、カシミール力の誘電率依存性測定、及びカシミール力の膜厚依存性の測定を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
カシミール力の測定に用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡の故障、及び北海道胆振東部地震に伴う全域停電の影響による故障のため、金属-絶縁体転移を示す試料を用いたカシミール力の誘電率依存性測定が遅れているため、次年度も引き続き実験を進めていく。 まずは復旧した装置の実験条件等が変わっていないか確認作業を行い、これまでと同じ条件で実験を進められるように環境を整える。その後、上記の研究目的に向け、本年度までに得られた静電気力の解析手法、及び探針と試料の作製条件に関する知見を基に、金属-絶縁体転移を示す試料を用いたカシミール力の誘電率依存性測定、及び階段状の磁性体薄膜を用いたカシミール力の膜厚依存性測定を行っていく。
|