2018 Fiscal Year Annual Research Report
Revealing the mechanisms behind the establishment of association between Megymenum gracilicorne and filamentous fungi on the female hind tibiae and the egg surface
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17J00410
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Research Institution | University of Tsukuba |
Research Fellow |
西野 貴騎 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 外部共生 / ノコギリカメムシ / 糸状菌 / Hemiptera |
Outline of Annual Research Achievements |
ノコギリカメムシの後脚共生器官および卵表面にて特定のグループの糸状菌との共生が成り立つ機構を解明することを目的として,RNAiによる候補遺伝子のノックダウンに向けた準備と,卵表面から糸状菌の維持に関与していると思われる糖たんぱく質の分離を行った.また,前年度かなわなかった未成熟成虫および終齢幼虫の後脚器官の組織切片の作成と観察を行った. RNAiは,羽化して間もない成虫を低温短日条件(10℃, 10L/14D)で6か月以上飼育したものに対してdsRNAを注射することにより行われる予定である.RNAiを行った昆虫は25℃,16L/8Dの長日条件で飼育し,標的遺伝子の発現量の確認,菌叢の変化,糸状菌の有無,組織の変化などを観察する予定である.標的遺伝子には,多糖類の合成遺伝子や多糖類の修飾にかかわる遺伝子,転写調節因子などを候補として選んでいる. ノコギリカメムシの卵殻は糸状菌に覆われるが,組織切片の観察によると,糸状菌は卵殻の内部に侵入しておらず,卵殻表面の多糖類を栄養源としていると考えられた.糸状菌の維持に関与していると思われる物質の分離のため,ノコギリカメムシに産み付けられて間もない卵を使用し,様々な溶媒で溶出を試みた.その結果,タンパク質のS-S結合を切断する機能を持つメルカプトエタノールとSDSを加えた場合に溶出することがわかり,卵殻表面の多糖類は糖タンパク質であると推察された。糖たんぱく質はSDS-PAGEで分離しており,今後LC/MSを使った解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は体調が思わしくない日々が少なからずあり,現在の進捗はやや遅れている. 2017年度および2018年度の予定では,組織切片の観察およびRNA-seqによる発現遺伝子の解析,RNAiによる発現遺伝子の機能解析,卵表面で共生に関与している物質の解析を行う予定であった. 現在,そのうち組織切片の観察,RNA-seqによる発現遺伝子の解析が完了している.RNAiによる発現遺伝子抑制に関しては,使用する昆虫の準備が完了し,卵表面で共生に関与している物質については分離まで完了している. 一方,ノコギリカメムシの近縁種であるツマキクロカメムシにおける菌叢の解析や,ノコギリカメムシの分離菌の病原性試験などを行っており,ある程度の進捗があった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は予定通りRNAiとその後の飼育・観察を行い,卵殻の糖タンパク質の解析も行う予定である. 今後の研究計画で変更する点としては,卵表面で糸状菌の維持に関与する物質が多糖類で合成が難しいと思われるため,物質の合成とその性質の評価を行うことは必ずしも行わないものとする. 一方,ノコギリカメムシと糸状菌の共生に関する記載的な論文はまだ一報も出ていないため,共生のメカニズムの解明に関する論文に先立って,記載的な論文をまとめる必要がある.それに関連して,ノコギリカメムシと腸内細菌の共生に関するデータやノコギリカメムシの分離菌の病原性に関連したデータなどを取る予定である. 2018年度より体調を崩しているため,体調に留意して無理をせずに研究を進める.
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Research Products
(1 results)