2017 Fiscal Year Annual Research Report
行列型電極刺激法による皮質線条体シナプスの学習機構の解明
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17J00440
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Research Fellow |
渡邉 桜子 沖縄科学技術大学院大学, 科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 皮質線条体 / 学習機構 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれ含め動物は、常に変化する環境に適応するため、学習し記憶しながら生活している。特に、皮質線条体は学習に関わる脳部位であり、この皮質線条体シナプスにおける長期的なシナプス結合の変化(シナプス可塑性)が学習の神経機構であると考えられている。本研究の目的は、皮質線条体のシナプスにおいて、複数の入力を受けたときの情報選択機構と、報酬ドーパミンのタイミングに着目し、神経細胞の学習機構を実験上で再現することである。 はじめに、電気生理学的手法でマウスの脳細胞記録を計測し、二組の異なる電気刺激からの入力に特異的なシナプス可塑性を計測した。二組とも長期抑圧(LTD)が起こったが、これは細胞が情報選択できないということではなく、入力のみ行った対照実験の結果、二組の入力の相互作用によるものであることがわかった。上記の成果は、アメリカの大脳基底核Gordon Research Conferenceにおいて、口頭及びポスターで発表した。 続いて、光操作による報酬ドーパミンのタイミングと組み合わせたシナプス可塑性実験を行うため、以下三点の実験方法の整備を完了した。(1)光源を調整し(2)チャネルロドプシン(ChR2)の発現に関しては、ウイルス注入手術ではなく、ChR2を発現したマウスと、ドーパミン細胞に特異的に発現させるDAT-Creマウス、及び細胞種を特定するタンパクを発現したマウスを交配することにより、安定したChR2の発現を実現する方法を確立した。(3)また、ファストスキャンサイクリックボルタンメトリー法で脳スライス上のドーパミンレベルを計測し、光操作によるドーパミンの放出を確認した。この光操作と組み合わせた複数入力下のシナプス可塑性実験は、さらに実験が必要であり、現在遂行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目に計画していた実験方法の整備は完了したが、現在も、当初の一年目の計画である光操作とシナプス可塑性の組み合わせ実験を行っており、進捗は計画よりやや遅れている。しかしながら、(1)光操作に関しては、当初計画していたマウスへのウイルス注入手術ではなく、三種類のマウスを交配することにより、安定したChR2の発現及び細胞種の特定を実現する方法を確立したため、手術及び術後回復にかける時間を短縮することができる。また、(2)推進方策で後述するように、8組ではなく2組の電極を用いた実験をさらに発展させることにより、研究計画を遂行する。以上二点の変更により、総合的に今後の計画内容は遂行可能であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、最終的には計8組の電極を用いて多数の複数入力を再現する予定であったが、整備した行列型電極で記録を行ったところ、一細胞が受け取れる皮質入力の範囲には限界があり、同時に最大でも2-3組からの記録しか取れないことが判明した。そこで、2組の電極を用いた実験を、さらに踏み込んで別の条件・薬理的手法による比較検討をすることにより、複数入力からの情報選択機構とドーパミンの影響という当初の研究目的達成することを目指す。現在、ドーパミン光操作との組み合わせによる神経可塑性実験を進めているところである。
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Research Products
(3 results)