2017 Fiscal Year Annual Research Report
布と身体のかかわりから見た人間観・身体観の研究:インドネシアの出産・治癒の事例
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17J00441
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
棚田 早紀 金沢大学, 人間社会環境研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 民族誌 / 文化人類学 / 女性研究 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドネシア西ヌサトゥンガラ州ロンボク島を主な調査地として、物質性の観点から島先住のササク人の人間観・身体観を明らかにすることを目的とする。国主導の医療介入と村の伝統的な医療の混在という文脈から、女性の周産期における文化習慣を通して胎児・新生児の人間性が形成される過程を民族誌的記述を通して明らかにするものである。従来の人類学的研究では制度面から凌駕的に論じられることの多かった医療政策の普及局面においてもミクロレベルでは布をはじめとするモノ・ヒトが織りなす社会関係が人間的な生の滋養に寄与しうることを指摘し、出産をめぐる伝統的な人格概念・身体理解が近代的な健康観・疾病観を受容しつつある様相を明らかにする。 研究方法として参与観察・聞き取りを主要手段とする人類学的フィールドワークを採用した。平成29年6月から10月(4ヶ月間)はロンボク島での現地調査を学振の経費で行い、ササク人女性の周産期における病気予防・健康づくりに関する民族誌データを収集した。得られた成果を米国コロンビア大学『South-South II: Materiality and Embodiment in Greater Asia and Africa Conference』で「In the Midst of Mythos and Medicine: Clothing the Cares of Pregnancy and Childbirth on Lombok Island」と題して口頭発表(英語)したほか、国立民族学博物館『平成29年度みんぱく若手研究者奨励セミナー』で「「病」の語り と身体化:インドネシア・ロンボク島における治癒・看護の事例」と題して口頭発表し、国内外で研究交流を行った。平成30年1月末から3月(2ヶ月間)はロンボク島において補足調査を行うとともに、博士学位論文の骨子を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究方法としてインドネシア語とササク語を用いた参与観察・聞き取り調査を主要手段とする文化人類学的フィールドワークを採用し、民族誌的データを収集した。ロンボク島の村落家庭に身を寄せ、そこを拠点 に通算約 6 ヶ月間の現地滞在調査を通してササク民族社会の女性の周産期における健康づくりのための文 化的習慣に関する資料を収集・検証した。平成29年4月・5月はインドネシアでのフィールドワークのための準備を国内で行った。 6月から10月にかけて約4ヶ月間、インドネシア・西ヌサトゥンガラ州ロンボク島での現地滞在調査 を、平成 29 年度科学研究費助成事業の経費で行った。 10 月から12月にかけては収集したデータの整理や文献調査を行うとともに、得られた成果を米国コロンビア大学での学会『South-South II: Materiality and Embodiment in Greater Asia and Africa Conference』で「In the Midst of Mythos and Medicine: Clothing the Cares of Pregnancy and Childbirth on Lombok Island」と題して口頭発表(英語)したほか、国内では国立民族学博物館での『平成29年度みんぱく若手研究者奨励セミナー: グローバル現象を人類学はどう捉えるか』において「「病」の語り と身体化:インドネシア・ロンボク島における治癒・看護の事例」と題して口頭発表し、国内外で研究交流を行った。平成30年1月から3月にかけての約2ヶ月間は再度インドネシア・ロンボク島において補足的な現地滞在調査を行うとともに、学術雑誌への論文の執筆・投稿を行い、博士学位論文の骨子を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
採用第 2 年度目(平成30年度)4月から7月にかけて、大学で指導教員の継続的な指導を受けつつ博士学位論文の執筆に集中する。8月にインドネシア・ロンボク島において約1ヶ月間の補足的な現地滞在調査を実施し、不足データを補充する。10月に予備審査を経て、12月に博士学位論文を提出する。12 月は『オーストラリア人類学会大会』などの国際会議で研究成果を発表する。上記の活動と並行して、学術雑誌(レイデン大学『Journal of the Humanities and Social Sciences of Southeast Asia and Oceania』、オーストラリア 人類学会誌『The Australian Jounral of Anthropology』)に投稿する英語論文の推敲作業も平成 30 年 度内に進行・完了する計画である。
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Research Products
(2 results)