2018 Fiscal Year Annual Research Report
Naフラックス法によるデバイス用低歪み・自立窒化ガリウム基板作製技術の研究開発
Project/Area Number |
17J00465
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 拓海 大阪大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | サファイア溶解 / 窒化ガリウム / ナトリウムフラックス法 / 液相成長 / 低反り / 大口径 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の低歪み化(低反り化)技術が大口径な結晶にも応用することが可能であるか試みた。まず、本手法では、口径が拡大することで、溶解すべきサファイア量が増加するため、溶解温度、溶解時間などの条件を再調査し最適化する必要があり、条件探索を行うことで、サファイアを選択的に溶解させる条件を明らかにし、大口径なGaN基板の作製に成功した。当該結晶の反りの評価を行ったところ、口径の小さい結晶の場合、使用している種結晶のサファイア厚を厚くすると、成長後の結晶の反りは小さくなったが、口径の大きい結晶の場合、サファイア厚を厚くしても成長後の結晶の反りは大きかった。これは、口径が大きい場合は、口径が小さい場合に比べて結晶(サファイアを含む)の断面二次モーメントが小さくなるため、成長中に発生する応力で反ってしまっていると考えられる。一方で、PS法を用いた場合、PSの面積割合を小さくすることで、口径の小さい結晶と同様に口径の大きい結晶の反りも小さくなった。これは、PS法では結晶に発生する応力自体を低減しているため口径に関わらず、反り低減に有効であったと考えられる。さらに、PS法では口径を大きくした際にやや反りが向上している傾向があり、エッジから受ける応力による反りへの影響が緩和されている可能性が示唆されている。これらのことから本年度では、PS法を用いて大口径GaN基板を作製することで、口径2インチ、曲率半径30m以上の結晶の作製に成功した。 以上のように、本年度は研究課題である大口径窒化ガリウム結晶の低歪化(低反り化)に対して取り組み、PS法を利用することで、極めて反りの小さい大口径な結晶の作製が可能であることを明らかにした。本年度ではこれらの成果を国内会議及び国際会議で発表しており、計5件の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたキラー欠陥の抑制に関しては、明らかになっていない点が多く、進捗が思わしくないが、他の窒化ガリウムの製法と比較すると、Naフラックス法を用いて作製した結晶の欠陥数は非常に少なく、電気特性評価の結果からも電流リークが少ない結果が示唆されており、現状キラー欠陥の抑制は急務ではないと考えられる。そのため、本年度では次年度予定していた大口径化を行い、低反り化との両立を試み、成功した。これまで、デバイス化した際に性能を低下させる要因として、転位、反りなどが考えられてきたが、近年、結晶品質の向上からこれまで見えてこなかった要因(転位周辺の不純物など)が明らかになってきている。今後デバイス性能を低下させる要因を解明するためには、品質の良い結晶を用いて電気特性を評価していくことが必要となってきており、その研究を促進させるためにも2インチ以上の口径でかつ低反り(曲率半径30m以上)かつ低転位(10の6乗以下)な窒化ガリウム基板の作製は極めて重要であると考えられるため、検討の順番を入れ替え、本年度は大口径化に取り組んだ。以上の理由より、計画していたキラー欠陥の抑制に関しては進捗が少ないが、大口径化に関して大幅に進捗しているので、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は大口径化した低反りな窒化ガリウム基板を複数枚作製し、デバイス評価を行うことで、キラー欠陥に関して調査を行う予定である。また、大口径化した低反りな基板を複数枚作製するには、結晶の長尺化(c軸方向の厚膜化)や再成長などを利用してバルク結晶を作製しスライスして得る方法が非常に有用であり、長尺化や再成長の検討も行う予定である。また、昨年度は実験装置の不調等が発生し、結晶育成ができず、進捗が遅れてしまう時期もあり、今年度も同様の懸念があるため、装置メンテナンスにも時間を割く予定である。
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