2017 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスの社会的排除/包摂をめぐる民主的福祉ガバナンス
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17J00511
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
源島 穣 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的排除/包摂 / 福祉ガバナンス / 福祉国家論 / 現代イギリス政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的包摂を実現する上で重要なアプローチである、福祉ガバナンスに着目する。その上で、福祉ガバナンスに参加するアクター間の権限やリソース、専門知が本来的に異なる中で、いかにして合意形成が実現するのか、イギリスブレア政権期の「近隣地域再生政策」を事例に解明することを目的とする。 本年度は、福祉ガバナンスの事例を踏まえた理論分析、実施地域における現地調査、調査の成果報告を行った。 福祉ガバナンスの事例を踏まえた理論分析は、福祉ガバナンスに従事するアクターの主体性を確保しつつ、最終的なアカウンタビリティを担う政府がいかにして舵取りしていくかを示す「相互作用ガバナンス論」に基づいて、ハリンゲイ地区における近隣地域再生政策の実施事例を検討した。その結果、ハリンゲイ地区では、相互作用ガバナンス論が示したように、政府がガバナンスの実施体制を構築、設計した上で、自治体やボランタリー・セクターが実施体制を協調的に適応することができたことを明らかにした。この内容を論文にまとめ、日本比較政治学会の学会誌「比較政治研究」に投稿し、査読を経て掲載された。 現地調査は近隣地域再生政策の実施地域であるテームサイド地区とタワーハムレッツ地区のLocal Libraryに赴き、資料収集を行った。 帰国後、収集した資料を分析し、ハリンゲイ地区の事例とあわせて、3地域の事例間比較を行った。その結果、事例間の共通性と差異を明らかにした。共通性に関しては、いずれの地域も中央政府の定めた政策実施スキームに基づいて自治体やボランタリー・セクターなどの各アクターが事業内容を協議し、予算を運用した点である。差異については、地域によって事業内容が異なった点である。各地域で深刻化していた問題が異なっており、その改善を目指す観点から事業が実施されたからである。以上の調査および分析結果について、社会政策学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた、福祉ガバナンスの理論に関する論文投稿および地域再生政策に関する現地調査を達成したため、おおむね順調に進展していると考えられる。 論文投稿に関しては、すでに調査を進めていた事例に理論的検討を行い、年度内に、査読を経て掲載することができた。 現地調査に関しては、2つの実施地域に赴き、それぞれで実施された事業内容や実施期間、予算執行等に関する資料を入手できた。この調査を踏まえた学会報告を行う段階まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、ハリンゲイ、テームサイド、タワーハムレッツの地域間に見られる共通性と差異までが明らかになっている。そこで今後は、テームサイド、タワーハムレッツの事例も相互作用ガバナンス論を踏まえて分析し、福祉ガバナンスにおける合意形成の条件を抽出していく。複数地域において、合意形成に至る過程に共通性を見出すことができれば、その条件について一般化が一定程度可能になると考えられる。この分析について論文にまとめ、行政学分野の学術誌に投稿することを予定している。
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Research Products
(2 results)