2017 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホールおよびその擬似天体の観測的検証に向けた理論研究
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17J00547
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
大神 隆幸 山口大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | シャドウ / グラバスター / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ブラックホールと同様な観測的帰結を示すような天体の候補の一つであるグラバスターによるシャドウ現象を中心に研究し、その成果を学会で報告した。 ブラックホール自身は光を発することはないが、周辺の光線の振る舞いを一般相対性理論に基づいて考察することで、電磁波観測でブラックホールが影のように見える現象が予測されている。その影のことをシャドウと呼ぶ。また似たような光線軌道を示すような別の天体でも同様の現象を示すと知られ、グラバスターと呼ばれる天体モデルもその候補の一つである。 そこでグラバスター付近で光源となる星間物質の振る舞いを流体力学を用いて解析し、その解を用いることで観測によって得られるであろう像を数値的に導出した。その結果、グラバスターの外部から落下する物質は天体の表面部分に降り積もり、あたかも光る球殻のように見えることを発見した。モデルによってはブラックホールの場合と同様に明るいリング状の像が現れ、その内部も明るくなるという特徴を示した。この結果の詳細は国際学会The 27th JGRGで口頭発表し、また幾人かの相対論研究者と議論を行った。 さらに、上記の計算は物質の振る舞いに球対称を仮定したが、次に軸対称を仮定して降着円盤を作る場合を考えた。グラバスターのサイズによっては光線の不安定円軌道を持つもの(smallモデル)と持たないもの(bigモデル)の二つのモデルを考えることができ、bigモデルではブラックホールの場合に影となる領域にも円盤の像が映り込むことで、明らかに異なる特徴を示すことを発見した。この結果をまとめたものを日本天文学会の年会でポスター形式で発表した。 また、南里らとの共同研究でブレーンワールドブラックホールの強重力下でのマイクロレンズ効果やシャドウ現象を研究し、セカンドオーサーとしてPhysical Review Dに投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではグラバスターやワームホールなどの重力波の波形を調べることを目標としていた。しかしグラバスターのいくつかあるモデルの中でも扱いやすいとされる薄い球殻を持つものでは球対称な摂動は扱えるが、重力波に重要な対称性の低い摂動は計算が難しいことが分かった。また、これまでの研究で扱ってきたエリスワームホールの安定性に関する先行研究の多くは摂動に対して不安定であることを示していた。 そこで本年度は重力波ゼミを開講することで基礎知識を深め、勉強会に参加してその他の重力波の計算方法を模索することに時間を費やした。その勉強会で一つ方法を学ぶことができ、それはワームホールなどにも上手く適用できるかは分からないが、試す価値のある方法であった。 また、本年度では大きな研究課題である「ブラックホールおよびその擬似天体の観測的検証に向けた理論研究」を進めるために電磁波観測に焦点を当てて研究を行い、研究実績にも示したような結果が得られた。 つまり当初の目的通りには進んでいないが、研究課題としてはある程度進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず平成29年度での研究結果をより広く公表するために論文としてまとめ、査読付き雑誌に投稿することを考えている。 また、前年度に学ぶことのできた新しい重力波の計算方法をワームホールに適用し、最低でも重力波の強度を導出するつもりである。上手く適用できない場合はその問題点を考察し、その他の天体モデルへの適用または新しい計算方法を考える。
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Research Products
(2 results)