2017 Fiscal Year Annual Research Report
内力制御と励振に基づく大自由度柔軟移動ロボットの制御系設計論の確立
Project/Area Number |
17J00601
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増田 容一 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ソフトロボティクス / 無脳ロボット / 無脳制御 / 自律分散制御 / 脚歩行 / 蛇行 / 這行 / 筋骨格系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,励振と内力制御に基づいて大自由度かつ柔軟な身体をもつ移動体の設計論を構築することである.本年度の報告では,複数の成果の中から特に抜粋して,報告者が新たに発見し,柔軟大自由度ロボットの設計論構築において重要なキー技術となる,ある現象について報告する. 本研究では,「センサやコントローラ,マイクロプロセッサの類を一切もたないロボットが,自然界の生物にみられる運動パターンを能動的に生成し,かつ状況に応じて運動パターンを適応的に選択する」という驚くべき現象を発見した.本現象のキーアイディアは,アクチュエータと柔軟身体に備わるダイナミクスを,運動パターン生成のための一種の制御則として活用することであった.本現象により,4脚歩行ロボット,ヘビ型ロボット,跳躍ロボットのほか,今後発表予定のミミズ型やウミヘビ,スナヘビ型ロボットにおいて,生物と同様の運動パターンを生成できる.これら現象は報告者が知る限り,世界で初めて発見されたものである. 今回発見した現象の活用により,詳細な身体モデルに基づくコントローラ設計が不要となる.このため,数学的な取り扱いの困難な柔軟大自由度ロボット制御の手がかりになることが期待される.また,基礎的な系における解析では,ロボット身体のもつ共振モードを励起する特性が明らかになっており,柔軟大自由度ロボットの高効率制御が可能となる. 本発見は,生物の運動制御原理の理解にも貢献するのではないかと期待している.報告者は,今回の発見を神経生理学の知見に基づいて再解釈することで生物の制御原理の説明を試みており,筋制御系のダイナミクス(特に伸長反射系)が,生物の周期運動の生成・同期において重要な役割をもつことを数理的に示した.本発見は,我々生物に備わる周期運動生成能力を説明する新たな仮説を提供することから,生物学など,より広範の研究分野でのインパクトが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度,当該研究においては期待を上回る大きな進展がみられた.報告者はキーとなる着想(アクチュエータに内在する出力逓減特性を活用した移動体設計)を得るとともに集中的かつ着実に研究に取り組み,アイディアの実証を行っている.その対象は脚歩行から蛇行ロコモーション,蠕動ロコモーションなど多岐にわたっている.アクチュエータが持つこの特性は普遍的なものであり,生体の筋肉,空気圧人工筋,油圧アクチュエータなどに適用することで生物・人工物に通底するロコモーション原理の解明に大きく資するものと期待される. また報告者は自ら開発した実機による検証のほか,数理モデルに基づく理論解析,数値シミュレーションによる解析,生体筋の伸張反射に基づくフィードバック制御モデルと人工アクチュエータの対比など多面的に研究を進めており,その成果を積極的に国際誌・国際学会へと投稿してきた.今年度に獲得した複数の学術賞はその証左である. 昨年度のうちに報告者が投稿した成果物は国内外合わせて22件(うち主著15件)にのぼり,その大半が英語での発信(査読付き国際会議論文9件[うち査読中2件],国際誌3件[うち査読中2件])である. 報告者は,得られた研究成果を非専門家にも分かりやすい動画として発信し続け,各地での実機デモンストレーションにも積極的に取り組んでいる.これら活動の成果は,IEEE spectrum(IEEEのフラグシップニュースサイト)やGIZMODO(技術系ニュースサイト)など大手メディアに複数の記事が掲載され,研究成果の認知度が高い.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,励振と内力制御に基づく大自由度かつ柔軟な身体をもつ移動体の設計論構築に取り組む.
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Remarks |
報告者は,国内外を問わないアウトリーチ活動に積極的です.得られた研究成果を非専門家にも分かりやすい動画として発信し続け,その活動の結果,IEEE spectrum(IEEEのフラグシップニュースサイト)やGIZMODO(技術系ニュースサイト)など大手メディアに複数の記事が掲載され,研究成果の認知度を着々と上げています.
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Research Products
(19 results)