2017 Fiscal Year Annual Research Report
非就業状態の女性を就業状態に戻す要因についての実証分析
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17J00607
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 真緒 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 保育所 / 認可外保育所 / 保育サービス / 再就職 / 母親 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題を遂行するために、主に以下の三点の研究を実施した。一点目は、認可保育所の利用可能性が母親の就業に与える影響の分析である。本研究には2016年に大阪府内で実施した独自調査のデータを使用した。現時点での分析の結果、認可保育所の利用可能性は、全体では母親の就業確率に有意な影響を与えていないものの、一部の母親に対しては就業促進効果をもつことが明らかとなっている。さらに、この効果は、出産後に新たに働きはじめる母親ではなく、出産前の職場で働き続ける母親を増やすことによってもたらされていることが分かった。 二点目は、認可外保育施設の存在と保育サービスの中身を考慮した分析である。保育施設と母親の就業に関する国内での研究の多くが、認可保育所に注目しているおり、データの制約から認可外保育施設の効果を分析した研究はほとんど存在しない。本研究は、一点目の研究と同じデータを用いているが、新たに大阪府内の認可外保育施設の情報を加えることで、認可保育所と認可外保育施設の両方の影響を考慮した分析を可能にしている。現時点での分析の結果、認可・認可外のいずれの保育施設においても、母親の就業開始時期を早める効果は確認されていない。一方で、どのような保育サービスを提供するかによって、母親の就業に与える影響が異なる可能性があることが分かった。 三点目は、出生時の子どもの健康状態がその後の成長に与える影響についての分析である。本研究では『21世紀出生時縦断調査』を用いて、出生時に低体重であることが、その後の心身の発達に与える影響を明らかにすることを目的としている。現時点での分析の結果、低体重で生まれることは、その後の体重、身長、言語発達やADHD傾向に対して負の効果を持つ可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究課題を遂行するために新たに二つのデータを申請、整理し、分析に足る情報を揃えた。その上で、具体的な推定を行い、一点目の研究結果については、複数回学会で報告し、他の研究者らからのフィードバックを反映させて改良を試みた。二点目の研究については、現在得られている研究成果をディスカッションペーパーとしてまとめた。三点目の研究については、推定結果の頑健性を確認している段階であり、近く学術誌に投稿する予定である。こうした状況から、今年度の研究はおおむね順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の研究を、研究報告等で得られたコメントや、最新の研究蓄積を取り入れながら発展させていく。具体的には、初年度における研究では十分議論できていない保育サービスの中身やその効果について検証するとともに、モデルを拡張し、より高度な統計手法を用いることで、母親の就業を分析する上でしばしば懸念される内生性など様々な問題に対処した分析を行う。
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Research Products
(3 results)